骨ルポ
ASBMR 2016 レポート
田中 賢一郎(島根大学内科学第一)
英語での質疑応答に苦戦したポスター発表。
紹介演題 [1]
筋由来因子であるirisinとb-aminoisobutyric acid (BAIBA)の骨芽細胞と骨細胞へ及ぼす影響
キーワード
筋由来因子、骨芽細胞、骨細胞
研究グループ
Tsutomu Matsumoto
- University of Missouri-Kansas City School of Dentistry
サマリー&コメント
筋より分泌されるirisinと BAIBAの骨芽細胞と骨細胞へ及ぼす影響を検討した。骨細胞様MLO-Y4細胞において、BAIBA (0.1-10 mM)とirisin (1-500 ng/mL)は酸化ストレスによる細胞死を抑制した。BAIBAはプロスタグランジンE2産生を有意に促進し、骨細胞のスクレロスチン発現を減少させた。IDG-SW細胞は後期骨芽細胞 (day 3: アルカリフォスファターゼ、1a型コラーゲン増加)、早期および後期骨細胞(day 14: Dmp1増加、day 28: スクレロスチン増加)へと分化する。IDG-SW細胞において、BAIBAとirisinはday 14でDmp1発現を抑制し、BAIBAは1a型コラーゲンをday 3で増加、day 14で抑制した。Day 28におけるスクレロスチン発現を、BAIBAは抑制し、irisinは増加させた。近年筋骨連関が注目されているが、BAIBAとirisinは筋から分泌され骨芽細胞および骨細胞に作用する重要な因子である可能性があり、今後のさらなる検討が期待される。
紹介演題 [2]
長期Odanacatib骨折試験 (LOFT):心血管疾患に対する安全性
キーワード
Odanacatib、カテプシンK、骨粗鬆症治療薬
研究グループ
Michelle O’Donoghue
- Brigham & Women's Hospital
サマリー&コメント
Odanacatib (ODN)は、コラーゲン等を分解する酵素であるカテプシンKを選択的に阻害する経口剤であり、新規の骨粗鬆症治療薬として開発されてきた。第三相試験では、16000人以上の閉経後骨粗鬆症において、ODN 50mg週一回投与により有意な骨折リスク低下が確認された。前臨床試験では、カテプシンKの阻害は動脈硬化の進行を抑制し、安定プラークを増加させる可能性が示され、当初の臨床試験では脳卒中リスクはプラセボとのハザード比1.16で有意差は認めなかった。今回、主要心血管系イベントに関する独立機関の再解析により、脳卒中リスクがハザート比1.32、P=0.003であることが判明した。さらに、5年間の延長試験の結果、ハザード比1.37、P=0.005と脳卒中リスクの有意な上昇を認めた。閉経後骨粗鬆症の第三相試験が成功し、承認申請に向かうはずだったが、脳卒中リスクを有意に上昇させたためODNの開発は中止となった。新規の骨粗鬆症治療薬と期待が高かっただけに非常に残念な結果であった。
医局の先生達と一緒に味わった絶品ステーキ。