日本骨代謝学会

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ASBMR 2016 レポート
伊藤 哲平(千歳科学技術大学 光科学研究科)

伊藤 哲平

紹介演題 [1]
Chronic Kidney Disease and Aging Diminish Bone Quality in C57Bl/6 Mice

キーワード

CKD, 老化, 骨質解析

研究グループ

Chelsea Heveran1, Eric Livingston2, Sarah Whetstone1, Moshe Levi3, Ted Bateman2, Karen King3, Virginia Ferguson1.

  • 1. University of Colorado
  • 2. University of North Caroline
  • 3. University of Colorado School of Medicine
サマリー

慢性腎臓病(CKD)は、高齢者の骨折リスクを高めることが示されている。青年期のマウスでは、CKDに伴う骨質の劣化が報告されている一方で、老化を伴ったCKDの骨質については未だ解明されていない。本研究は、老化を伴ったCKDがどのように骨質を劣化させるかを示した最初の研究である。3、15、21ヶ月の雄C57Bl/6マウスに5/6Nxを施し、CKDモデルマウスを作製した。マイクロCT、ナノインデンテーション-ラマン、三点曲げを用いて、CKDモデルならびShamマウスの大腿骨ならび脛骨の骨質を評価した。CKDと老化はともに骨微細構造の劣化や機械的特性の低下、組織レベルで化学変化を起こすことが示された。このような老化を伴うCKDによる骨質劣化は、腎臓疾患で認められる骨の脆弱性説明するのに役立つであろう。

コメント

CKDに伴う骨折リスクや骨質劣化が問題視されるなか、本研究は老化に伴うCKDの骨質劣化について議論した初めての研究であり、大変興味深いものであった。また、腎臓疾患に限らず臨床的な骨の脆弱性は病態以外の要因も影響することを考慮する必要があることに改めて気づかされた。現在、世界中ではさまざまな機器分析法を用いた骨質解析が行われている。今回の議論のように骨質劣化の要因が病態あるいはその他に起因するのかを複数の分析手法を用いて明らかにしていくことが重要である。

紹介演題 [2]
Raman and FTIR bone quality parameters correlate with physical chemical properties of chemical standards and native tissue

キーワード

FTIR, ラマン, 骨質解析

研究グループ

Erik Taylor1, Ashley Lloyd1, Carolina Salazar2, Eve Donnelly1

  • 1. Cornell University
  • 2. University of Los Andes
サマリー

ラマンならび赤外イメージングは、骨質評価に用いられてきた。ラマンイメージングは赤外イメージングに対して高い空間分解能を有する一方、ラマンイメージングにより評価された骨質は、赤外イメージングのように他の手法で検証されたことはない。本研究は、ラマンイメージングと赤外イメージングを用いて天然組織と試薬のミネラル/マトリックス比を評価し、それを比較検討した。ラマンイメージングから得られたミネラル/マトリックス比は、赤外イメージングから得られた結果と強い相関関係を示した。また、天然組織のミネラル/マトリックス比は、試薬と同じような結果が得られた。

コメント

本研究は、ラマンと赤外イメージングを用いた骨質解析の詳細な検証の報告であり、非常に多くのことを学ばせて頂いた。今回の議論によりラマンイメージングにおける骨質解析の信頼性がより具体的になった。また、in vivoにおけるラマンおよび赤外イメージングによる研究が検討される中で、各手法から得られた骨質データを相補的に用いることが可能であるならば、それぞれの長所を活かしながら、より正確に骨質解析が行われることになり、迅速かつ非侵襲的に評価をしなくてはならない臨床への応用も期待される。

伊藤 哲平