日本骨代謝学会

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ASBMR 2016 レポート
石原 嘉人(Department of Oral Medicine, Infection, and Immunity, Harvard School of Dental Medicine)

石原 嘉人
学会主催のパーティー会場にて。留学先 (Harvard School of Dental Medicine, Roland Baron Lab)のメンバーと。

紹介演題 [1]
The Long-Term Odanacatib Fracture Trial (LOFT): Cardiovascular Safety Results

キーワード

Odanacatib, カテプシンK, 骨細胞

研究グループ

Michelle O’Donoghue et al.

  • Brigham and Women’s Hospital / Harvard Medical School
サマリー&コメント

学会2週間程前にリリースされた「Merck社Odanacatibからの撤退」というニュースは衝撃的であった。今回の学会でその根拠となる第III相臨床試験の結果を発表するという事前のニュースもあり、本セッション会場は超満員。幾重にも連なる立見の列が出来た。本コホート研究は、40カ国16000人以上の閉経後骨粗鬆症患者を対象として行い、Odanacatibを週50mg投与した場合における影響について最大5年後まで追跡調査を行っている。問題となった副作用についていくつかの因子が述べられたが、その中でもStroke(脳卒中)に対するリスクはプラセボ群と比較し投与60ヶ月後において37%高くなる(p=0.005)という驚きの結果であった。カテプシンKが骨代謝に果たす役割についての基礎研究を行ってきた私にとって、この結果は非常に残念であり、様々な思いが去来した。そして、何故そのような副作用が生じるのかという新たな命題を与えられた気分でもあった。

紹介演題 [2]
Mechanically-Induced Calcium Oscillations in Osteocytes Facilitate Release of RANKL, OPG, and Sclerostin Through Extracellular Vesicles and Mediate Skeletal Adaptation

キーワード

Odanacatib, カテプシンK, 骨細胞

研究グループ

Genevieve Brown et al.

  • Columbia University
サマリー&コメント

私が初めて参加した当時のASBMRでは、骨細胞(osteocyte)に関する発表は両手で数えられる程度であったように記憶している。そして、その演題数は年々上昇の一途を辿っているように思う。大学院生の頃から骨細胞に関する研究を行ってきた私にとって、骨細胞がひとつのトレンドを形成しているような現状は嬉しくもあり不思議な感覚でもある。“ASBMR 2016 Most Outstanding Basic Award”を受賞した本演題は、骨細胞の主たる機能のひとつと考えられているメカニカルストレスに対する応答能と骨代謝に果たす役割についてin vitro, in vivoで検討を行っている。本研究によって、
1)骨細胞は、メカニカルストレス応答の初期反応である細胞内カルシウムオシレーションを介し細胞外小胞を産生・分泌する。
2)それら細胞外小胞は、RANKL, OPG, SOSTといった骨代謝関連マーカーの発現を有し、カルシウムオシレーションによって制御される。
3)カルシウムオシレーション阻害薬を投与したマウスは、メカニカルストレスに起因した皮質骨の骨増生が対照群と比較して有意に少なくなる。
という事が明らかとなった。今後の骨細胞研究の焦点はどこへ進むのか?そして自分はどのようなアプローチを行っていけば良いのか?本演題は、私の頭にある疑問点に対して非常に示唆に富む内容だったように感じた。