日本骨代謝学会

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ANZBMS 2016 レポート
河田 学(東京大学大学院医学系研究科外科学専攻整形外科学)

河田 学

2016年8月21日~24日までオーストラリア ゴールドコーストのGold Coast Convention and Exhibition Centreで開催されたANZBMS 2016にtravel grantを頂き参加致しましたので、同学会のご報告をさせて頂きます。

紹介演題 [1]
Relationship Between Total Hip BMD T-score and Incidence of Nonvertebral Fracture With up to 10 Years of Denosumab Treatment

研究グループ

スイス Geneva University Hospitalおよび米国Amgen社らの多施設共同研究

サマリー&コメント

研究結果及び感想:かの有名なFREEDOM studyで10年以上follow upされたDenosumab治療群における非椎体骨折発生率が、股関節のBMD T-scoreと相関があるかどうかを調査した研究。10年間のDenosumab治療継続により股関節のBMD T-scoreが基準値以上にまで上昇に成功した割合は、かなりの割合に上る(-2.5 S.D. 以上が95%, -2.0 S.D. 以上が81%, -1.5 S.D. 以上が61%)が、骨密度と非椎体骨折発生率とが相関があるかどうかを解析することで、これらの患者群に対してさらに骨密度を上昇させる治療を行う必要があるかどうかを明らかにした研究である。
Cox比例ハザードモデルを用いて解析したところ、Denosumab治療継続患者の股関節BMD T-scoreと非椎体骨折発生率は、非常に広範なT-scoreの範囲において逆相関関係を認めたが、-2.0 S.D.~-1.0 S.D. においては未治療群における傾向と同様に相関関係が弱まった。またこれらの傾向は、年齢や既存骨折の有無で分けたサブ解析でも維持された。
本研究結果は、治療の評価尺度として定期的にBMDを測定する重要性と有用性を証明するものであり、実臨床にも役立つ非常に有意義な演題であるように思った。

紹介演題 [2]
Is proximal femur geometry from DXA-derived 3D analysis predictive of pQCT-derived geometry of the tibia

研究グループ

地元GoldcoastのGriffith Universityの研究グループ

サマリー&コメント

DXA法は骨粗鬆症の診断法としては広く受け入れられているが、あくまでも二次元的評価であり、皮質骨と海綿骨を判別することは難しい。一方でpQCT法は皮質骨・海綿骨の双方の骨形態を評価する手段として開発されたが、撮像時間が長い点や、通常は脛骨等が撮影部位として選択され、臨床的意義の大きい股関節周囲等の撮影ができないことなどの限界がある。
そこで発表者らはこれらのジレンマを解決するべく、conventionalなDXA法で取得した画像から作成した大腿骨近位部および全股関節の3D画像は、pQCT法により取得した脛骨の画像と相関関係があるかどうかを調査した。
健常成人男性78名および女性156名に対して、大腿骨近位部のDXA画像を撮影し、3D Hip software (DMS Group, France)を用いて大腿骨近位部及び全股関節の骨量および皮質骨厚を算出し、脛骨のpQCT画像による骨形態計測の結果と相関関係があるかを回帰分析を用いて解析した。
大腿骨近位部及び全股関節の骨量と、脛骨の骨量との間の相関係数は、各々0.53および0.67であった(ともにP<0.001)。大腿骨近位部の皮質骨及び海綿骨の骨量と、脛骨の皮質骨及び海綿骨の骨量との間の相関係数は、各々0.45および0.49であった(P<0.001)。さらに全股関節の皮質骨量と、脛骨の皮質骨量の間の相関係数は0.52であり(P<0.001)、また大腿骨近位部の皮質骨厚と脛骨の皮質骨厚の間の相関係数は0.18であった(P<0.01)。以上から筆者らは、DXA画像を元にした3D解析はpQCT法の代用となり得ると結論付けている。
同様の試みは多く見かける研究ではあるが、多くの被験者を用いたかなり手間のかかった、しかし非常にclearな結果の発表であるように見受けられた。

南半球に位置するオーストラリアの8月は冬に当たるが、亜熱帯地域に属するゴールドコーストは朝晩はやや冷え込むものの、日中は過ごしやすい気候であり、観光も含めて非常に充実した学会参加でした。

河田 学