日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

骨ルポ

TOP > 骨ルポ > ANZBMS 2016 > 黒住 旭

ANZBMS 2016 レポート
黒住 旭(産業医科大学医学部第一内科学講座)

黒住 旭

紹介演題 [1]
MSCs regulate host cell recruitment and immune response during osteogenic differentiation

キーワード

MSC、VEGF、骨分化

著者

Yinghong Zhou

  • Institute of Health and Biomedical Innovation, Queensland University of Technology, Kelvin Grove, QLD, Australia
サマリー&コメント

骨再生治療において、細胞間の相互作用は重要な役割を果たしていると考えられる。この研究の目的は、骨再生の際に骨芽細胞へ分化したMSC (OMSC) から分泌される血管内皮細胞増殖因子VEGFが、分化前のMSCやマクロファージにどのように作用するかを検討した。頭蓋骨欠損モデルマウスにおいて、MSCが骨分化する際に、VEGFの分泌が著名に増加した。OMSCから分泌されるVEGFは、MSCやマクロファージの骨欠損部位へのリクルートを増加させた。またOMSCはマクロファージの炎症性サイトカイン分泌を調節することで、局所での炎症も制御していた。更にはOMSCからのVEGF分泌を抑えると、MSCやマクロファージの骨欠損部位へのリクルート、マクロファージからの炎症性サイトカイン分泌および骨修復は著明に減少した。
MSCはその多分化能から骨や血管、心筋の再構築などの再生医療への応用が期待されている。またVEGFをはじめ様々なサイトカインを分泌し、免疫調節作用も有している。本研究結果から、OMSCから分泌されるVEGFは骨分化の際に非常に重要な役割を果たしていることが分かった。

紹介演題 [2]
Circulating Wnt antagonists and severe abdominal aortic calcification in elderly women: a cross-sectional study

キーワード

DKK1、Wnt/β-カテニンシグナル、腹部大動脈石灰化

著者

Wilhelmina A Touw

  • Erasmus MC, Rotterdam, Netherlands
サマリー&コメント

古典的経路であるWnt/β-カテニンシグナルの阻害因子であるDKK1は、男性において腹部大動脈石灰化の重症度と負相関を示すことが知られている。しかし他の阻害因子や女性においての検討は少なく、本研究では70歳以上の768名の女性を対象に、DKK1に加えてsFRP3、Wif1の血中濃度の測定も行った。結果は、DKK1のみCTにおいて腹部大動脈石灰化の重症度と関連を認めた。また年齢やBMI、喫煙歴、薬剤、糖尿病や動脈硬化性疾患の既往、腎機能等で調節した上で、DKK1の値で4群に分けた場合、最も高値群に比べて2番目に低い群では1.83倍、最も低い群では2.05倍に腹部大動脈石灰化の重症度が増大した。

Wntによる細胞内シグナル伝達機構には、β-カテニンを介して標的遺伝子の転写を促進する古典的経路とβ-カテニンの関与しない非古典的経路が知られている。これまで各種Wntシグナル阻害因子のノックアウトマウスでは、骨形成亢進を伴う骨量増加が認められることが報告されている。本研究結果から、高齢女性においても古典的経路なWnt/β-カテニンシグナルは血管石灰化の重要な抑制因子であることが明らかとなり、動脈硬化性疾患進展に対する治療標的となることが明らかとなった。またWnt/β-カテニンシグナルは骨形成だけでなく、血管石灰化にも重要な役割を果たすことが分かった。

黒住 旭