日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

Infinite dream

TOP > Infinite dream > 福永 仁夫

骨塩定量はボーダーレス

川崎医科大学 福永 仁夫
  • 骨塩定量装置
  • 骨粗鬆症
  • 多職種連携

The Chemical Dynamics of Bone Mineral
川崎学園永年勤続者表彰(2014, 学長秘書と)

 私が骨塩定量に携ったのは、1974年京都大学医学部放射線医学教室に入局した時です。
 当時は、画像診断の時代の到来を予測させるように、頭部用CTが我が国で普及し始めており、核医学の分野でも99mTcが放射性医薬品として導入されました。特に、99mTc標識リン酸化合物による骨シンチグラフィは、「99mTcの最高傑作」と知られていました。40年前には骨粗鬆症は我が国では疾患として注目されるものではありませんでしたが、既に125Iを線源に用いたSPAによる前腕骨骨塩量測定法が存在していました。
 その後、我々のグループは、第2中手骨MDや踵骨QUSなどの末梢骨、躯幹骨用の腰椎定量的CT法、DPAを経て、SXA、DXAなど多数の測定器開発に関与しました。
 その中で、従来のシンチスキャナー方式と異なり、シンチカメラを光子の検出器に用いたDPA装置(QUALOMEX)が印象が深いものです。その理由は、核医学に従事する者としては検出器としてシンチカメラを使用するというアイデアは通常考えつくものです。つまり、測定時間の短縮が可能なためです。中外製薬と浜松ホトニクスと共同研究を行い、その成果(Application of dual photon absorptiometry using a gamma camera to the evaluation of bone mineral density in spine)をデンマークコペンハーゲンのチボリ公園で行われたInternational Symposium on Osteoporosis, 1987に発表したのが思い出されます。

The Chemical Dynamics of Bone Mineral
左:サメの軟骨の実験(Scripps Institute of Oceanography. 1982, San Diego)
右:International Symposium on Osteoporosisの案内(1987, Copenhagen)

 もう一つの印象深い装置は、骨によるX線吸収を測定する方法と、超音波の骨への伝導、減衰を利用して測定する方法をhybridした装置(UXA-300、日立アロカ)です。骨の硬度と骨質を合わせた情報が得られるものです。
 その他、多くの骨塩定量装置の開発や評価を行い、臨床経験を積むと共に、第17回International Bone Densitometry Workshop (2006)をcochainとして開催したり、現在は精度の良い測定のための「DXAによる骨量測定の実際」(骨粗鬆症財団)などの啓発事業に従事しています。

The Chemical Dynamics of Bone Mineral
第17回International Bone Densitometry Workshop(2006, 京都)

 今までの骨塩定量装置の開発・研究の結果から、下記の事項を実感しました。多分野との協働は、核医学では、医学・理工学・薬学の協働が日常的に行われています。骨塩定量でも当然のことですが、測定機器の開発にも他職種連携が必須でした。
 装置の完成品を使用するだけでは、装置が持つ課題が捉えにくいし、アイデアが見えにくいことがあります。そのため、自らまたは共同して開発を行うと多くの人達の多様な観点からの考えに接することができます。
 日本では、1970年代にMD法が独自に改良され、また多くのメーカーがSPA、DPA、SXA、DXAの開発を行いました。特にQUSは種々の装置が市販されました。このように日本は、競合がありますが、それぞれが種々の観点を取り入れ、改良されていると実感しています。
 骨塩定量装置もアカデミックな目的のものと、日常臨床に用いるものがありますが、translation researchのように対立するものではなく、互いに補い合うものと考えています。
 当然の如く、得られた成果は、国際的に評価を受けますが、併せて現在の世界の情勢、特に利用者のニーズの把握に役立つことを実感しました。