小児の健全な骨発育のために、骨ミネラル代謝異常症の病態解明及び新規治療の開発をめざしています
- ミネラル代謝
- 骨成長
- 軟骨細胞
大阪府立母子保健総合医療センター研究所 環境影響部門部長の道上です。
当研究所は、周産期及び小児医療の専門基幹施設である大阪府立母子保健総合医療センターに併設する研究所として1991年に開設され、母性及び新生児期、小児期における種々の疾患の病態の解明及び治療の開発を目的として活動しているコンパクトながらユニークな研究所です。私はもともと小児科医としてキャリアをスタートしましたが、臨床に携わる中で、小児における最大の特徴の一つである「骨が形作られ、成長する」しくみへの興味が高まり、研究を始めました。
胎児期から乳幼児期、小児期にかけて、身体は急速な発育を遂げます。小児が日々成長することは大きな驚きであり、最終的な大きさが一定の範囲におさまることもまた不思議です。身体発育において中心的な役割を担っているのは骨格の形成と成長であり、その破綻は骨格の形成異常や成長障害を引き起こします。また、高齢化社会において大きな問題となっている骨粗鬆症は若年時の最大骨量(peak bone mass)を増加させることで予防可能です。こうしたことから、当部門では、骨ミネラル代謝の研究を通じて「成長の不思議」をひもとき、胎児及び小児の健全な骨発育に貢献することをめざして研究を行っています。
成長を規定する内軟骨性骨形成過程においては、未分化な間葉系細胞が凝集し、増殖軟骨細胞、さらに肥大化軟骨細胞への分化を経て石灰化に至り、血管侵入を契機に骨に置換されます。当研究室ではこれまで、遺伝性骨系統疾患の責任遺伝子の解析や軟骨細胞におけるジーントラップなどにより、内軟骨性骨形成の分子メカニズムの解析を行ってきました。また、小児期に遭遇することが多い代謝性骨疾患の一つが骨石灰化障害であるくる病であるところから、骨の石灰化に必須のミネラルであるカルシウム、リンの恒常性維持機構やビタミンD代謝、生物学的石灰化に関わる多彩な分子群の機能的な連関についても解析を進めてきました。最近では、X連鎖性低リン血症性くる病のモデルマウスの骨細胞においてリン酸利尿因子であるFGF23に加えてDMP1やFAM20Cの発現が増加していることや、骨で産生されたFGF23が遠隔臓器である胎盤に内分泌的に作用して胎仔のビタミンD代謝調節に関わることを報告しています。これらの研究を通じて、種々の骨ミネラル代謝異常症や骨成長障害の病態を明らかにし、新たな診断法や治療法の開発に結びつけたいと考えています。特に、多くの骨系統疾患はこれまで「治らない病気」の代名詞でしたが、これらの疾患を「治せる病気」に転換していくのが夢です。
骨代謝学会での初めての発表で提示した思い出の症例(Hereditary Hypophosphatemic Rickets with Hypercalciuria) の骨組織
当研究室は小さな研究室ですが、チームワークの良さが自慢です。ラボを卒業したOBやOGも良く顔を出してくれます。
興味を持たれた方は、ぜひ一度、私達の研究室をのぞいて見てください。
ラボメンバー集合写真(母子センター「母と子の庭」にて)