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特殊化した動脈後毛細血管は成人の骨リモデリングを促進する

Specialized post-arterial capillaries facilitate adult bone remodelling
著者: Mohanakrishnan V, Sivaraj KK, Jeong HW, et al.
雑誌: Nat Cell Biol. 2024; 26(12): 2020-2034
  • R型毛細血管
  • Cav1
  • Dach1

論文サマリー

これまでにH型やL型血管が骨内に分布し、固有の作用を発揮することが見出されてきた。著者らは、骨形成とホメオスタシスに関連する血管の多様性のさらなる理解を目指し、R型毛細血管と呼ばれる新たな血管の役割を詳細に検討した。scRNA-seqデータから骨リモデリングに関連する内皮細胞のサブクラスターを抽出し、その中で特に発現量の高いCaveolin 1(Cav1)に着目した。Cav1高発現R型毛細血管は骨芽細胞や破骨細胞の近くに存在し、リモデリングが盛んに行われている部位に局在していた。次に、R型毛細血管に高発現する転写因子Dach1に着目し、血管内皮特異的Dach1欠失マウス及び過剰発現マウスを解析した結果、Dach1によるR型毛細血管と海綿骨の形成促進作用が見出された。さらに、加齢や骨粗鬆症治療薬の投与による骨代謝の変化へのR型毛細血管の関与も示された。

推薦者コメント

本研究は、R型毛細血管が生後の海綿骨形成に寄与し、骨粗鬆症の治療標的になりうることを示している。R型毛細血管の増加により、血管周囲細胞集団の局所的な代謝特性を微調整することで骨リモデリングの制御を行っている可能性が示唆された。また、R型毛細血管は骨の成長だけでなく、老化や骨粗鬆症に関連する骨リモデリングの重要なメディエーターである可能性も示している。今後の更なる解析が期待される。

大阪大学大学院歯学研究科組織発生生物学講座・金井 凛、阿部 真土、大庭 伸介

(2025年6月6日)

辻 麻美、大庭 伸介 前田 真吾