Myosin IIは細胞接着と細胞運動を制御することで、Shhシグナルによる歯胚上皮の形成を媒介する
著者: | Wei Du, Adya Verma, Qianlin Ye, et al |
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雑誌: | PLoS Genet. 2024; 20: e1011326. |
- Myosin II
- 歯胚形成
- Shh
論文サマリー
歯胚の発生は上皮組織の肥厚と間葉組織への陥入により開始されるが、本研究では歯胚上皮の形成におけるMyosin II(Myo II)の役割とそのメカニズムの解明を試みた。タモキシフェン依存性にK14陽性細胞でMyh9(Myo IIAをコード)およびMyh10(Myo IIBをコード)を欠失させたマウス(K14CreER;Myh9/10fl/fl)では、歯胚上皮の陥入幅の拡大と陥入深度の減少が認められた。これはK14陽性細胞でソニックヘッジホッグ(Shh)を欠失させたマウスの歯胚や、ヘッジホッグシグナル阻害剤であるCyclopamine存在下で培養した歯胚の表現型と一致していた。また、タイムラプスイメージング解析においてK14CreER;Myh9/10fl/flでは歯胚上皮細胞のランダムな移動が認められたことから、Myo IIが指向的な細胞移動を誘導し、歯胚上皮の正常な形態形成に必須であると考えられた。さらに、マウス胎仔下顎骨の器官培養系において、Cyclopamine処理による歯胚上皮の陥入異常がMyo II活性化剤CalyculinAおよびAKT活性化剤SC79により回復した。以上より、ShhはPI3K/AKTシグナル経路を介してMyo IIを活性化し、歯胚の形成を調節することが示された。
推薦者コメント
Shhは胎生期のさまざまな組織において細胞増殖や分化に重要な役割を果たすモルフォゲンとして知られている。本研究により、マウスの歯胚発生においてPI3K/AKT-Myo IIを介して細胞接着および細胞運動を制御し、歯胚上皮の形態形成に関与していることが明らかとなった。今後はShhの時空間的な制御機構を解明することで、組織特異的なShhの分子メカニズムの理解が深まることが期待される。
大阪大学大学院歯学研究科組織発生生物学講座・辻 麻美、大庭 伸介
(2025年6月6日)