GLP-1を介した腸-関節軸を通じた変形性関節症の治療は腸内FXRシグナル伝達を標的とする
Osteoarthritis treatment via the GLP-1–mediated gut-joint axis targets intestinal FXR signaling
著者: | Yang Y, Hao C, Jiao T, et al |
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雑誌: | Science. 2025; 388: eadt0548. |
- 変形性関節症
- 腸内細菌叢
- GLP-1
論文サマリー
変形性関節症(OA)は「摩耗と破損」の関節疾患であり、世界中で5億人以上に影響を与えているとされるが、治療は困難である。腸内細菌叢やその代謝物がOAに関与していることが示唆されているが、その詳細は不明であった。本研究では、2つの独立したコホートで行ったターゲット代謝物解析により、OA患者において胆汁酸代謝と腸内細菌叢の変化(glycoursodeoxycholic acid (GUDCA)の減少と、GUDCAの前駆体の生成を促進するClostridium bolteaeの減少)を確認した。筆者らは、GUDCAが腸内のfarnesoid X receptor(FXR)の拮抗薬として作用することを明らかにし、OA患者における腸内FXRシグナルの活性化を示した。筆者らはマウスモデルを用いて腸内FXRを抑制すると、glucagon-like peptide 1 (GLP-1)の分泌が促進され、この腸内で生成されたGLP-1が膝関節に到達し、OAの進行を緩和することを示唆した。また、C. bolteaeがGUDCAの前駆体を生成する可能性を示した。これらの結果から、腸内FXRの抑制が血中GLP-1を通じてOAの進行を緩和することを示唆し、腸と関節間における相互作用の可能性が提案された。
推薦者コメント
本研究は、腸内細菌群–GUDCA–腸FXR–GLP-1–関節経路を介してOAの進行が調節されるメカニズムを提唱し、この経路をターゲットにした治療法の将来性を示唆した。ただ、腸内FXRとGLP-1がOAの進行にどのように直接的に影響を与えるのか、分子メカニズムは不明であるため更なる実験的アプローチが今後の重要な課題といえる。
東京大学医学部附属病院 骨・軟骨再生医療講座 寺島 明日香
(2025年6月6日)