破骨細胞形成における自然免疫の訓練はマウスにおける炎症性骨破壊を促進する
Innate immune training of osteoclastogenesis promotes inflammatory bone loss in mice
著者: | Haacke N, Wang H, Yan S, et al |
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雑誌: | Dev Cell. 2025; 60: 1–17. |
- 訓練免疫(trained immunity)
- 破骨細胞前駆細胞
- 炎症性骨破壊
論文サマリー
著者らはこれまでに長期にわたる訓練免疫 trained immunity(TRIM)が長寿命の骨髄系前駆細胞やその系譜細胞(単球・マクロファージ・好中球)の免疫応答を強化することを示してきた。本研究は、自然免疫TRIMが破骨細胞前駆細胞をも訓練し破骨細胞形成や炎症性骨破壊を悪化させることを明らかにした。β-グルカンをマウスに投与すると骨髄や末梢の単球/破骨細胞前駆細胞が再プログラムされ、歯周炎や関節炎モデルでの骨破壊が増強されるという結果を得た。さらに筆者らはβ-グルカンを投与されたマウスから採取した細胞をβ-グルカン投与されていないマウスに移入しても関節炎の増悪が起きたことを示している。発現遺伝子解析から、転写因子melanogenesis-associated transcription factor(MITF)がこのTRIM破骨細胞形成にとって重要であることを示した。
推薦者コメント
TRIMは既報では、感染防御や抗腫瘍といった人間にとって有益な効果が報告されていた。しかし、本研究はTRIMの「不適応」な側面として、炎症性骨破壊を促進してしまうような場合があるということを見出し立証した。破骨細胞形成が自然免疫記憶の対象となり得ることを示した本研究は、TRIMの機能を再評価する重要な知見を提供している。
東京大学医学部附属病院 骨・軟骨再生医療講座 寺島 明日香
(2025年6月6日)