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ランニング後のアキレス腱とAchilles tendinopathyにおけるコラーゲンの変性:生体内のメカノフィジオロジーと磁気共鳴画像法

Collagen denaturation in post-run Achilles tendons and Achilles tendinopathy: In vivo mechanophysiology and magnetic resonance imaging
著者: Fang Y、Zhu D、Wei J et al.
雑誌: Sci. Adv. 10, eado2015 (2024) 2 October 2024
  • アキレス腱障害
  • MMP
  • MRI

論文サマリー

Achilles tendinopathyは主要構成成分であるI型コラーゲン線維の破壊を特徴とし、これは病態進行とも密接に関連しているが、その病態生理は十分に理解されていない。。CHP(collagen hybridizing peptide)は変性したコラーゲン分子を特異的に可視化できるペプチドであり、in vitroで負荷をかけた腱で増加することが報告されている。本研究では、ラットを用いてトレッドミルによる運動モデルおよびコラゲナーゼ投与によるAchilles tendinopathyモデルを作出し、CHPを用いてin vivoでコラーゲン分子の変性を可視化し、コラーゲン変性メカニズムの解明に挑戦した論文である。本研究結果から、in vitroで考えられていたような運動による機械的負荷によりコラーゲン分子が巻き上がることで変性するのではなく、腱構成細胞から分泌されるMMP群による消化によりコラーゲンが変性することを明らかにしている。さらに、臨床応用としてAchilles tendinopathyモデルを用い、CHPでラベルした変性コラーゲンのMRIでの可視化に成功し、非侵襲的な診断法としての可能性を示した。

推薦者コメント

運動後に起こる腱障害はコラーゲンの巻き戻りによる構造的な変化ではなく、その数時間後におこるMMPによる消化が主な原因であるということは驚きであった。この研究では腱を構成する細胞のうち、MMP陽性と陰性のものが存在することから、メカニカルストレスに反応する細胞としない細胞が存在する可能性が考えられ、非常に興味深いと思った。また、CHPを用いたMRIによる非侵襲的な可視化は臨床的に大きなインパクトがあると思った。CHPの毒性は不明であるが、将来的に臨床応用できることを期待したい。

日本獣医生命科学大学獣医学部比較細胞生物研究室・藤原渓・伊豆弥生

(2025年6月6日)