
10-ヒドロキシ-2-デセン酸はアスパルチルβ-ヒドロキシラーゼを標的とし、軟骨細胞老化を阻害することで変形性関節症の進展を抑制する
10-hydroxy-2-decenoic acid prevents osteoarthritis by targeting aspartyl β hydroxylase and inhibiting chondrocyte senescence in male mice preclinically
著者: | Geng N, Fan M, Kuang B, et al. |
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雑誌: | Nat. Commun. 2024; 3;15(1):7712. |
- 変形性関節症
- 10-ヒドロキシ-2-デセン酸
- 軟骨細胞
論文サマリー
変形性関節症(OA)は、関節軟骨の線維化や変性に伴う関節痛を主症状とする退行性関節疾患であり、効果的な疾患修飾薬の開発が希求されている。また、軟骨細胞老化とOAの進展との関係性が報告されている。著者らは、OA患者の検体や外科的モデルマウスあるいは老化マウスを用いた解析から、10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10-HDA)がOAの軟骨変性や痛みを抑制することを明らかにした。さらに、10-HDAが軟骨細胞のアスパルチルβ-ヒドロキシラーゼ(ASPH)に作用し、同細胞の機能を調節していること、そしてその下流では、ERK/p53/p21およびGSK3β/p16経路を介して細胞老化を抑制していることが示された。以上の結果から、10-HDAはASPH-ERK/GSK3β軸を調節することで、軟骨細胞老化を阻害し、OAの進展を抑制することが明らかになった。
推薦者コメント
10-HDAはロイヤルゼリーに含まれる脂肪酸であり、寿命延長や抗ガン作用など様々な疾患に対する抑制作用が報告されている。著者らは、ASPHが10-HDAの新規標的であり、ASPH-ERK/GSK3βが軟骨細胞老化を調節していること、およびOAの進展に重要であることを初めて明らかにした。10-HAD-ASPH-ERK/GSK3β軸の詳細な解析を期待したい。
岐阜薬科大学薬理学研究室・吉本 誠・檜井 栄一
(2025年2月21日)