
頭蓋骨骨再生において血管新生と骨新生は連動しない
Angiogenesis is uncoupled from osteogenesis during calvarial bone regeneration
著者: | Bixel MG, Sivaraj KK, Timmen M, et al. |
---|---|
雑誌: | Nat Commun. 2024;15(1):4575. |
- 骨再生
- 血管新生
- 頭蓋骨
論文サマリー
骨再生の場では、血管新生と骨原生細胞による複雑な治癒過程をたどる。筆者らは、生体内多光子顕微鏡を用いた解析から、大腿骨骨折では血管新生と骨形成が密接に連携する一方、頭蓋骨骨欠損の骨再生では初期の血管新生と骨原生細胞の浸潤が連動しないことを明らかにした。
頭蓋骨損傷部の骨端では、骨膜由来の骨原生細胞が骨芽細胞に分化する一方、これらは損傷部内部での微小血管形成とは無関係であった。その後、骨原生細胞層が損傷部位に侵入し骨再生を進めるとともに、同部位で血管の萌芽やリモデリングが生じることで損傷部位の血流が骨形成に対応して変化していた。単一細胞解析により、頭蓋骨損傷部位では大腿骨骨折と同様に間葉系細胞の不均一性や骨再生促進に寄与する細胞群の増加が示され、血管新生や低酸素関連遺伝子群の発現がわずかに上昇していた。また、頭蓋骨損傷部位において、NotchやVEGFシグナルが、骨化に影響を与えずに血管新生に影響を及ぼすことが明らかとされた。
本研究の知見は、骨再生や生体工学的手法を用いた治療アプローチに臨床的な示唆を与える可能性がある。
推薦者コメント
本論文では、骨再生過程における血管新生の役割が頭蓋骨などの扁平骨と大腿骨などの長管骨、また、膜性骨化期と軟骨内骨化期で大きく異なることを示しており、頭蓋骨の骨再生では血管新生と骨原生細胞の浸潤という現象が分断化され、損傷部位における血管の変化が骨再生にほとんど影響を及ぼさないことを明らかにしている。骨修復時における血管新生と骨形成の連関については、未だ明確な分子メカニズムが明らかにされていない。本研究を足掛かりに、骨損傷後の複雑な骨再生プロセスが明らかになることを期待したい。
北海道大学大学院歯学研究院硬組織微細構造学教室・長谷川 智香
(2025年2月21日)