
前立腺がんが誘発する内皮細胞から骨芽細胞への細胞転換は、Wntシグナル伝達経路によるM2マクロファージへの極性化により骨-腫瘍微小環境における免疫抑制を惹起する
著者: | Yu G, Corn PG, Mak CSL, et al |
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雑誌: | Proc Natl Acad Sci U S A. 2024, 121: e2402903121. |
- マクロファージ
- 内皮細胞から骨芽細胞への細胞転換
- 前立腺がん
論文サマリー
本研究目的は、骨転移性去勢抵抗性前立腺がん(bmCRPC)誘発性の微小環境変化機構の解明にある。骨転移サンプル中のM2マクロファージ(MΦ)を特徴づける32遺伝子の発現レベルが高いほどbmCRPC患者の生存期間は短かった。
原発腫瘍やリンパ節転移と比較して、bmCRPC骨生検サンプルでは、CD206 陽性(CD206+)MΦの集積が多く認められた。骨原性前立腺がん(Pca)異種移植モデルマウスでもCD206+MΦが腫瘍誘発性骨領域に動員されていた。また、骨原性腫瘍由来の腫瘍関連MΦ(bone-TAM)は、非骨原性腫瘍由来のTAM(ctrl-TAM)よりも、古典的・非古典的Wntシグナル伝達経路の活性化を伴うM2MΦ遺伝子発現が高かった。骨芽細胞へ細胞転換した腫瘍誘発性骨芽細胞(OSB)前駆体の内皮細胞(EC)により産生された複数のパラクライン因子がM2MΦへの極性変化を誘導し、M2-TAMを骨腫瘍微小環境(bone-TME)へと動員していた。Bone-TMEにおけるCD8+ T細胞の増殖と細胞溶解活性の抑制は、bone-TAMをWnt阻害剤で処理することで阻害された。Pca誘発性のECからOSBへの細胞転換を遺伝的・薬理学的に阻害すると、骨原性腫瘍のM2MΦレベルが減少した。
推薦者コメント
本研究では、マウスとヒトの両者で研究目的の検証を行い、多面的かつ網羅的解析から、Pca誘発性の内皮細胞から骨芽細胞への細胞転換がbone-TMEにおける免疫抑制を惹起させ、これにマクロファージの極性変化が関与することを証明したことから、これらのメカニズムを制御する治療法の開発が、bmCRPC患者に効果が限局的な免疫チェックポイント療法を改善できるのかもしれない。
北海道大学大学院歯学研究院口腔機能学分野冠橋義歯補綴学教室・黒嶋 伸一郎
(2025年2月21日)