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化学療法はインフラマソームを活性化し炎症関連性の骨量減少を惹起する

Chemotherapy activates inflammasomes to cause inflammation-associated bone loss
著者: Wang C, Kaur K, Xu C, et al
雑誌: eLife. 2024, 13: RP92885.
  • 化学療法
  • インフラマソーム
  • ピロトーシス

論文サマリー

化学療法は悪性腫瘍の治療法として広く使用され、がん患者の生存率向上に寄与するが、種々の臓器に対してメカニズム不明な著しい毒性をもたらす。本研究では、化学療法の直接的オフターゲット効果検証のため、腫瘍を持たないマウスモデルを使用した。

その結果、ドキソルビシンが野生型マウスに著しい骨喪失を惹起し、破骨細胞数の増大、白血球減少症、ならびに血清中のダメージ関連分子パターン(DAMPs;セルフリーDNAやATPなど)とサイトカイン(IL-1βやIL-18など)レベルの上昇が惹起されていた。また、ドキソルビシンは、マクロファージや好中球におけるインフラマソームAIM2とNLRP3を活性化して、白血球減少効果と関連する炎症性細胞死ピロトーシスとネトーシスを惹起していた。また、AIM2やNLRP3を欠損させると、ドキシソルビンによるサイトカイン分泌、細胞死、骨量減少への効果は減弱することが分かった。

推薦者コメント

本研究では、ドキシソルビンがどのようなメカニズムで生体に毒性をもたらすかを検証するため,野生型と遺伝子改変マウスで実験が行われていた。本研究結果で、インフラマソームがドキソルビシンにより惹起される骨量減少に対して重要な役割を果たすことが示されたことから、この種の薬剤で治療される患者の組織恒常性を担保できるテーラーメイド補助療法が開発できるかもしれない。

北海道大学大学院歯学研究院口腔機能学分野冠橋義歯補綴学教室・黒嶋 伸一郎

(2025年2月21日)