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c-kitを介したトロゴサイトーシスにより造血幹細胞プールが制御される

Regulation of the hematopoietic stem cell pool by C-Kit-associated trogocytosis adaption.
著者:Gao X, Carpenter RS, Boulais PE, et al
雑誌:Science 385(6709): eadp2065, 2024
  • 造血幹細胞
  • マクロファージ
  • トロゴサイトーシス

論文サマリー

骨髄移植療法の際、より多くの造血幹細胞(HSC)を採血により得るために、HSCの骨髄から血中への動員がG-CSF投与により促される。本研究では、以上の過程において、血中に動員もしくは骨髄中に留まるHSCの細胞表面タンパク質の特徴を明らかにし、その移行メカニズムを解明した。最初に、細胞表面にマクロファージ(MΦ)関連マーカーを発現するHSCサブセットの存在を示した。これらMΦマーカー陽性のHSCは機能的ではあるものの、MΦマーカー陰性のHSCとは対照的に、G-CSF処理がなされても骨髄中に留まった。一方、トロゴサイトーシスとは、細胞膜上のタンパク質が膜ごと別の細胞に移る現象であるが、HSCはこれを介して、骨髄MΦから直接的にMΦマーカー蛋白質を受け取る可能性が示された。また、以上のMΦとHSC間におけるトロゴサイトーシスは、c-Kit(CD117)により制御され、この機序はヒトでも認められることが示唆された。

推薦者コメント

本論文では、トロゴサイトーシスによるMΦからHSCへの膜移行が、5分以内に完了する素早い反応であることを示している。すなわち、本論文より、成体幹細胞がトロゴサイトーシスを介して機能調節機構を迅速に獲得するという概念が確立された。本領域の今後のさらなる研究成果が待たれる。
(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口利英)

(2024年11月21日)