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骨細胞の機械的刺激は小型の細胞外小胞を放出することにより,非小細胞肺癌の骨転移巣の腫瘍細胞の休眠状態を維持する

Mechanically stimulated osteocytes maintain tumor dormancy in bone metastasis of non-small cell lung cancer by releasing small extracellular vesicles
著者:Xie J, Xu Y, Liu X, et al.
雑誌:Elife. 2024; 12: RP89613.
  • 骨細胞
  • 機械的刺激
  • 骨転移

論文サマリー

運動は骨転移の進行を抑制することが示されているが,その機序は十分には解明されていない。本研究で著者らは,骨組織に隣接する非小細胞肺癌(NSCLC)細胞の増殖能が,周囲の腫瘍細胞よりもはるかに低いことを発見した。次に,運動によって生じる機械的刺激を感知する骨細胞が,miR-99b-3pなどの腫瘍抑制性miRNAを含む小型の細胞外小胞を放出することによりNSCLC細胞の増殖を抑制し,休眠状態を維持することを明らかにした。さらに,脛骨への機械的負荷がNSCLCの骨転移の進行を抑制することを示した。特筆すべきことに,中程度の運動がNSCLCの骨転移の進行を抑制し,さらにゾレドロン酸の併用が相加効果をもたらすことが確認された。また,運動によるプレコンディショニングが骨転移の進行を効果的に抑制することも示された。本研究は,運動が骨転移の進行を抑制する機序の理解を大きく前進させるものである。

推薦者コメント

運動による骨転移の進行抑制効果に,骨細胞への機械的刺激とそれに伴うmiRNAを含む細胞外小胞の分泌が関与していることを示した興味深い研究である。骨転移を有する患者,あるいはそのリスクを有する患者において,運動を推奨する科学的根拠が示されたものと考えられる。運動は筋力やQOLを維持・向上させる上でも重要であり,また費用がかからないことも大きな利点であるが,一方で骨転移を既に有する担癌患者に一様に運動を推奨することは現実的ではない。骨細胞の機械的刺激を誘導するような薬剤の開発も,今後の重要な方向性になると思われる。
(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科学・駒場 大峰)

(2024年11月21日)