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β-カテニンの抑制は骨形成と脂肪形成の分化のホメオスタシスを崩し,グルココルチコイド誘発性大腿骨頭壊死の発症につながる

β-catenin inhibition disrupts the homeostasis of osteogenic/adipogenic differentiation leading to the development of glucocorticoid-induced osteonecrosis of the femoral head
著者:Xia C, Xu H, Fang L, et al.
雑誌:Elife. 2024; 12: RP92469.
  • β-カテニン
  • Wntシグナル
  • グルココルチコイド誘発性大腿骨頭壊死

論文サマリー

グルココルチコイド誘発性大腿骨頭壊死(GONFH)は,骨の損傷と大腿骨頭の構造崩壊を特徴とする頻度の高い難治性疾患である。しかし,その発症機序の詳細は明らかではない。本研究で著者らは,GONFH患者の壊死した大腿骨頭において,β-カテニンの低下に関連する異常な骨形成と脂肪形成を観察した。さらに,GONFHを発症させたラットにおいて,グルココルチコイドへの曝露がβ-カテニンシグナルの抑制を介して骨髄間葉系幹細胞(BMSCs)の骨芽細胞系と脂肪細胞系への分化を妨げることを明らかにした。骨由来のCol2+系統細胞はBMSCsの主要な構成細胞の一つであり,9ヶ月間の追跡により大腿骨頭での骨形成に関与した。β-カテニン遺伝子(Ctnnb1)のCol2+細胞特異的ノックアウトは,分化の方向を骨芽細胞から脂肪細胞にシフトし,成長後のマウスではGONFHを再現する表現型が確認された。本研究により,β-カテニンの抑制が骨形成と脂肪形成の分化のホメオスタシスを崩すことによりGONFHの発症に寄与することが明らかとなった。また,GONFHの理想的なマウスモデルが確立された。

推薦者コメント

GONFHの病態を解明した画期的な研究である。BMSCsからの分化が骨芽細胞から脂肪細胞にシフトすることがGONFHの背景にあり,これにβ-カテニンの抑制が大きな役割を担っていることが明らかとなった。本研究ではWntシグナルのアゴニストの投与によってGONFHが部分的に改善したことも示されており,治療標的となる可能性も大いに期待される。抗スクレロスチン抗体であるロモソズマブはWntシグナルの抑制を阻害することから,GONFHに対する治療応用も仮説としては成り立つ。今後さらなる研究展開を期待したい。
(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科学・駒場 大峰)

(2024年11月21日)