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関節炎においてCD200+線維芽細胞が、炎症収束を促す間葉系ネットワークを形成する

CD200+ fibroblasts form a pro-resolving mesenchymal network in arthritis
著者:Simon Rauber, Hashem Mohammadian, Christian Schmidkonz, et al
雑誌:Nature Immunology. 2024; 682-692
  • 関節炎
  • 線維芽細胞
  • 抗炎症

論文サマリー

関節リウマチの滑膜線維芽細胞にまつわる研究は近年非常に盛んであり炎症や骨関節破壊などに寄与する集団の特性が報告されている。一方、治療により関節炎が収束する過程で線維芽細胞の特性がどのように変化するかは、ほとんど不明である。まず著者らはFAP(線維芽細胞活性化タンパク質)を標的とした68Ga-FAPI-04プローブを用いて、関節リウマチ患者、乾癬性関節炎患者を対象にPET/CTイメージングを実施し、炎症時における線維芽細胞の活性化を可視化することを試みた。その結果PETシグナルは活動性の関節炎では高いが、TNF製剤やIL-17抗体による関節炎抑制後には低下することが確かめられた。様々な関節炎モデルマウス33例のscRNA-seqデータの統合解析の結果、滑膜表層型やIL-6/Mmp3陽性の炎症型とは別に、CD200陽性の線維芽細胞亜集団を見出し、さらにこれらがTNF TgマウスやIL-23過剰発現誘導関節炎モデルにおいてTNF阻害やIL-17阻害により増加することがわかった。2型自然リンパ球(ILC2)は関節炎の抗炎症に寄与することが知られているが、CD200+線維芽細胞は、CD200-CD200R1シグナルを介してILC2の表現型を安定化させ生存を促す。scRNA-seq解析により炎症性MMP3+IL6+線維芽細胞からCD200+線維芽細胞へ転換することが示唆され、さらにCD200+線維芽細胞ではFAPの内在化の程度が低く、それが炎症収束過程のFAPI-04 PETシグナルの低減を反映すると考えられた。最後にヒト関節炎の空間トランスクリプトミクスから、CD200+線維芽細胞はILC2と共局在することが示された。以上より、炎症収束過程で起こる線維芽細胞集団の動態変化が明らかになり、CD200+線維芽細胞による抗炎症作用が明らかとなった。

推薦者コメント

関節炎が寛解するとCD200+線維芽細胞が減少するという結果も示されており、単に炎症が収まるにつれて増える細胞ではなく、積極的に炎症収束に資する集団であることが窺えられる。治療感受性・抵抗性とも関連するのか、今後の進展に期待したい。
(金沢大学がん進展制御研究所 免疫環境ダイナミクス研究分野・岡本一男)

(2024年11月21日)