骨髄形質細胞は細胞外ATPを感知するためにP2RX4を必要とする
著者: | Masaki Ishikawa, Zainul S. Hasanali, Yongge Zhao, et al |
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雑誌: | Nature. 2024; 626:1102-1107 |
- 骨芽細胞
- 形質細胞
- 細胞外ATP
論文サマリー
抗体産生細胞である形質細胞(プラズマ細胞)の一部は、骨髄で長期生存能を獲得し、持続的な抗体産生に寄与する。しかし長寿命型形質細胞の生存維持に関わる骨髄微小環境の分子実態はまだ不明な点が多い。ギャップ結合分子であるPANX3は細胞内ATPを細胞外に放出するチャネル機能を有し、骨芽細胞で高く発現している。著者らは、PANX3欠損マウスでは血清中のIgG、IgM、IgA量が低下し、骨髄形質細胞が著明に減少することを見出した。骨髄細胞と骨芽細胞との共存培養系により、PANX3欠損骨芽細胞では形質細胞の維持能が低下しており、それは細胞外ATPの放出障害に因るものであった。一方著者らは、形質細胞で細胞外ATPを感知する分子としてP2RX4を特定し、P2RX4変異マウスでは血清中抗体量の低下と骨髄形質細胞の減少が起こることも示した。またP2RX4特異的阻害剤5-BDBDは、細胞外ATPによる形質細胞維持を抑制し、in vivoにて骨髄形質細胞数の減少を引き起こした。さらに2種類の全身性エリテマトーデスのマウスモデルを用いて5-BDBD投与による自己抗体産生阻害と腎症状抑制効果も実証した。形質細胞では大量かつ持続的に抗体産生を担うため適正なタンパク質の品質管理機構が必要である。5-BDBDによるP2RX4阻害はCHOPを介した小胞体ストレス依存性細胞死を引き起こし、それが骨髄形質細胞の減少に繋がることを示した。以上より、骨芽細胞が分泌する細胞外ATPを感受することが、骨髄内で形質細胞が長期生存することに必須であることが明らかにされた。
推薦者コメント
PANX3欠損マウス、P2RX4変異マウス、5-BDBD投与マウスで起こる骨髄形質細胞の減少が非常にdrasticであり、PAXN3-P2RX4経路の重要性が明確である。著者の石河先生はこれまで骨格形成におけるPANX3の機能を明らかにされてきたが、細胞外ATPの供給を介した新規の免疫制御も担うことが判明し、非常に興味深い発見である。
(金沢大学がん進展制御研究所 免疫環境ダイナミクス研究分野・岡本一男)
(2024年11月21日)