変異DNMT3Aによるクローン性造血は炎症性骨量減少を促進する
著者: | Wang H, Divaris K, Pan B, et al. |
---|---|
雑誌: | Cell. 2024; 187: 1–22 |
- クローン性造血
- 炎症反応
- DNMT3A変異
論文サマリー
クローン性造血(Clonal hematopoiesis of indeterminate potential, CHIP)は、老化に伴う造血前駆細胞の後天的変異から生じ、特定の変異を持つ血液細胞がクローン性に増殖する。筆者らは、CHIPの中でも高頻度でみつかる DNA methyltransferase 3A (DNMT3A) 変異と、成人4,946人における歯肉炎症の有病率に関連を見出した。 DNMT3A-driven CHIP に関わるヒトのホットスポット変異R882Hに相当するヘテロ接合型機能喪失変異(R878H)を持つマウス骨髄細胞を野生型に骨髄移植したところ、変異細胞は骨髄系とリンパ系の両方の系統にクローン性増殖した。また、骨髄内の破骨細胞前駆細胞および末梢の破骨細胞分化能を持つマクロファージが増加した。この変異Dnmt3a細胞移植によるクローン性造血は、自然発症歯周炎発生頻度を促進し、破骨細胞分化の亢進、IL-17依存性炎症、好中球の反応活性化、制御性T細胞の免疫抑制活性の低下とも関連し、さらに、実験的に誘発された歯周炎および関節炎をも悪化させた。DNAメチル化レベルの解析の解析を行ったところ、mTORシグナルの関連が示唆され、DNMT3A-driven CHIPとその結果生じる歯周炎はmTOR 阻害剤 (ラパマイシン)投与により抑制できた。
推薦者コメント
DNMT3A-driven CHIPは、炎症性破骨細胞前駆細胞の増加を引き起こすだけでなく、Treg機能の低下、IL-17炎症反応の促進、およびIL-17の下流細胞エフェクターである好中球の活性化を引き起こすなど、炎症反応に対抗する宿主の能力にも悪影響を与えていた。加齢に伴い、歯周炎や慢性疾患が増加することが知られているが、これらの克服にCHIPが標的の候補となることを示している。
(東京大学医学部附属病院 骨・軟骨再生医療講座・寺島 明日香)