腱-骨の再生のための免疫調節多細胞足場
Immunomodulatory multicellular scaffolds for tendon-to-bone regeneration
著者: | Lin Du, Jinfu Wu, Chengtie Wu et al |
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雑誌: | Science Advances. 2024 March 8; 10(10) |
- マクロファージ
- PGE2
- 再生
論文サマリー
従来の腱ー骨損傷に対するバイオマテリアルは腱や骨の再生能力を活性化することで組織再構築を目指しているが、免疫環境や多組織再生機能については考えられておらず、期待された成果は得られていない。本研究では、ケイ酸マンガンナノ粒子(MS)を含んだゼラチンメタクリロイルに(GelMA)に腱前駆細胞と骨髄幹細胞を混ぜ、腱と骨の2層になるように3Dプリンターでスキャフォルドを作成し多組織誘導を試みた。このスキャフォルドは腱細胞と骨細胞を誘導する他、マンガンイオンによりマクロファージからPGE2を分泌させ、M2マクロファージを増殖することを示した。さらに、ラットとウサギの回旋筋腱板に導入し、組織と機能的回復を示した。これらの結果は、組織再生において免疫環境を制御することが重要であること、同時に無機物イオンがこれを可能にすることを明らかにした。
推薦者コメント
本研究より、ケイ酸マンガンナノ粒子により免疫環境整備と腱/骨前駆細胞の足場を提供することで、腱ー骨の境界の損傷を再生できる可能性が示唆された。ラットおよびウサギでの損傷の再生は確認できたが、さらに大型の動物においても再生能力が発揮されるのか興味深い。マンガンイオンにより放出されたPGE2の腱および骨への分化を促進するシグナル伝達経路は不明のままであり、今後、分化促進のメカニズムが解明されることを期待します。
(日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 比較細胞生物学教室・藤原 渓・伊豆 弥生)