加齢に伴ってマクロファージから分泌されるグランカルシンは、骨折治癒過程において骨格幹細胞/前駆細胞の老化を誘導する
Age-related secretion of grancalcin by macrophages induces skeletal stem/progenitor cell senescence during fracture healing
著者: | Zou NY, Liu R, Huang M et al. |
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雑誌: | Bone Res. 2024; 25;12(1):6. |
- 骨折
- グランカルシン(GCA)
- 老化
論文サマリー
骨格幹細胞/前駆細胞 (SSPC) の老化は、加齢に伴う骨再生能力低下の主因だが、その老化の詳細な原因は不明である。著者らはこれまでに、グランカルシン (GCA) が老化マクロファージから分泌されることを報告している。本研究では、仮骨内のマクロファージより分泌されたGCAは、SSPCの老化を引き起こし、骨折治癒を遅延させることを明らかにした。若齢マウスにヒトrGCAを局所注射すると、SSPCの老化が誘導され、骨折の修復が遅れた。一方、単球/マクロファージにおけるGcaの遺伝子欠失は、高齢マウスにおける骨折修復を促進し、SSPCの老化を軽減した。さらにメカニズム解析により、GCAはプレキシンB2受容体 (PLXNB2) に結合し、Arg2を介してミトコンドリアの機能を阻害し、細胞老化を引き起こすことが明らかとなった。また、SSPCにおけるPlxnb2の欠失は骨折治癒を妨げた。さらにGCA中和抗体の投与により、高齢マウスの骨折治癒が促進された。
推薦者コメント
著者らは、骨再生におけるGCAとPLXNB2の重要な役割を強調しており、GCAは、高齢者の骨折癒合不全や骨折癒合遅延に対する有望な治療標的であることを明らかにした。しかし加齢に伴うGCAの蓄積は、組織修復など、別の生物学的プロセスに影響を与えるかどうかは、さらなる研究が必要である。いずれにせよ、加齢と骨折治癒を結びつける物質とメカニズムの解明は非常に興味深く、今後も注目していきたい。
(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室・杉原 健吾・檜井 栄一)
(2024年8月20日)