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がん細胞におけるde novoステロイド産生は骨転移と破骨細胞形成を促進する

De novo steroidogenesis in tumor cells drives bone metastasis and osteoclastogenesis
著者:Sandor LF, Huh JB, Benko P, et al.
雑誌:Cell Rep. 2024, 43: 113936.
  • がん骨転移
  • CYP11A
  • プレグネノロン

論文サマリー

破骨細胞は、がん細胞によって誘導される骨溶解において中心的な役割を果たしているが、骨転移形成における破骨細胞活性化の分子機序はまだ十分に解明されていない。本研究で著者らは、骨転移の際に破骨細胞の分化と機能を促進することができるがん細胞由来因子の同定を目指した。まず、E0771乳がん細胞株を連続してin vivoでセレクションすることで得られた高骨転移性E0771/bone細胞株を用い、その培養上清中に可溶性RANKL以外の破骨細胞分化促進活性を有する可溶性因子が存在していることを明らかにした。E0771/bone細胞とE0771親株の遺伝子発現プロファイルをバルクRNA-seq解析により比較して多数同定された遺伝子のうち、骨指向性のがん細胞で強く発現上昇していたCyp11a1に着目した。CYP11A1はシトクロムP450ファミリーでミトコンドリア内膜に局在し、コレステロールをプレグネノロンに変換するステロイドホルモン生合成の律速酵素として知られている。次に、Cyp11a1を発現するがん細胞が、in vivoでの骨転移形成をサポートするかどうかを検討するため、Cyp11a1欠損B16F10メラノーマ細胞を作製した。親株とCyp11a1欠損細胞の野生型マウスへの皮内移植後のin vivo増殖率に有意差はみとめられず、肺転移形成レベルにも差はなかったが、骨転移を誘導したところCyp11a1欠損B16F10細胞を注入したマウスでは骨転移がほとんどみとめられなかった。これらのマウス大腿骨では、B16F10親株を注入したマウスに比べ海綿骨量が高く、破骨細胞数や血中CTXレベルの低下がみとめられた。in vitroでプレグネノロンはマウスおよびヒトのTRAP陽性多核破骨細胞数とサイズを用量依存的に増加させ、細胞融合を促進したが、破骨細胞特異的遺伝子発現などには影響しなかった。この詳細な分子メカニズムを同定するため、著者らは以前の報告でケミカルバイオロジーとケモプロテオミクスを統合したアプローチにより網羅的に同定されたプレグネノロン結合タンパク質のうち、プロリル4-ヒドロキシラーゼβサブユニット(P4HB、プロテインジスルフィドイソメラーゼとしても知られる)に着目した。P4HBは小胞体に局在する酵素であり、翻訳後のジスルフィド結合形成を触媒し、タンパク質フォールディングの際にシャペロンとして機能することが知られている。P4HBはマクロファージの遊走に関与することが知られており、プレグネノロンは破骨前駆細胞の遊走もP4HB依存的に促進することが示された。さらに、著者らはプレグネノロンがP4HB依存的にOC-STAMPの(遺伝子発現ではなく)細胞表面発現を上昇させることで、細胞融合を促進することを見出した。破骨細胞におけるP4HBの役割をin vivoで調べるために、E0771/bone細胞を尾動脈から注入したマウスにP4HB阻害剤ケルセチン-3-ルチノシドを経口投与したところ、骨転移形成が有意に抑制された。さらに、2976人の乳がん患者コホートにおいて、CYP11A1の高発現は予後不良と関連していることが示された。以上の結果から、CYP11A1を発現するがん細胞はプレグネノロンを産生し、P4HBを介して骨転移の形成と破骨細胞形成を促進することが明らかとなった。

推薦者コメント

高骨転移性のがん細胞がどのようなメカニズムで骨転移を誘導するかの一端が示されたが、多くの実験がin vitroで行われており、また小胞体に局在するP4HBがどのようにしてOC-STAMP細胞表面発現を上昇させるのかは不明のままとなっている。
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学分野・林幹人)