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TOP > Hot paper > 黒嶋 伸一郎

ビスホスホネート製剤による治療に失敗した骨粗鬆症患者における1細胞解析を介したヘテロな骨免疫プロファイル

Heterogeneous osteoimmune profiles via single-cell transcriptomics in osteoporotic patients who fail bisphosphonate treatment.
著者:Keum BR, Kim HJ, Lee J, et al
雑誌:Proc Natl Acad Sci U S A. 2024 Feb 20;121(8):e2316871121.(Erratum in: Proc Natl Acad Sci U S A. 2024 Apr 2;121(14):e2404416121.)
  • ビスホスホネート
  • 骨免疫学
  • 骨粗鬆症

論文サマリー

閉経後の骨粗鬆症は、破骨細胞活性と骨芽細胞活性の不均衡から生じるが、骨恒常性における骨免疫システムの関与を示唆する科学的根拠が増加している。一方、ビスホスホネート製剤(BP)による治療失敗率は40%に達する。本研究では、閉経後の女性で、骨粗鬆症ではない患者、BP治療後に骨粗鬆症が改善した患者、ならびにBP治療に失敗した患者における末梢血細胞の1細胞解析が行われた。その結果、骨粗鬆症患者では骨髄系細胞(特にT細胞受容体陽性マクロファージ)の増加が認められた。また、リンパ球の階層構造は大きく異なり、特にBP治療失敗患者ではナチュラルキラー細胞が著しく増加していた。さらに、条件依存的な相違を持つ免疫細胞のバイオマーカーリストが得られ、細胞間相互作用解析から骨粗鬆症患者とBP治療失敗患者に特異的な細胞情報のフローが存在していることが分かった。

推薦者コメント

本研究は、骨粗鬆症患者とBP製剤の治療に成功した/失敗した患者から得られたデータであり、1細胞解析のみの臨床データではあるものの、サンプル数もあることから臨床的意義は非常に大きいと思われる。本研究結果から、閉経後の骨粗鬆症とBP治療の失敗における免疫学的不均一性が解明されるとともに、骨粗鬆症の病態に対する理解が深まり、診断や治療薬選択などの基盤構築にも寄与できると考えられた。
(北海道大学大学院歯学研究院口腔機能学分野冠橋義歯補綴学教室・黒嶋伸一郎)

(2024年8月20日)