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カルシウム依存性カリウムチャネルKCNN4はPIEZO依存性メカノトランスダクションをNLRP3インフラマソーム活性化に結びつける

KCNN4 links PIEZO-dependent mechanotransduction to NLRP3 inflammasome activation
著者:Collins JM, Lang A, Parisi C, et al
雑誌:Dev Cell. 2024; 59(2):211-227.
  • Piezo
  • インフラマソーム
  • 細胞力覚

論文サマリー

NLRP3遺伝子の変異によって引き起こされるクリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)の患者は、抗原に依存せずに自己炎症が起こることが知られているが、そのメカニズムは不明である。筆者らは、単球系細胞に対してメカノセンサーチャネルPIEZO1のアゴニストであるYoda1で処理をすると、NLRP3インフラマソームの活性化が増強され、パイロトーシスが誘導されることを見出した。さらに、CAPS 型点変異を有するNLRP3では、この反応が増強した。関節炎モデルマウスにおいては、Nlrp3をノックアウトすると足首の腫脹と温度が減少し、炎症反応がNLRP3インフラマソーム活性化に依存する。一方で、骨髄細胞系列特異的にPiezo1 とPiezo2の両方の遺伝子を欠損させたマウスでは関節炎が抑制されることから、PIEZO依存的なメカノトランスダクションがNLRP3依存的な炎症を調節することが示唆された。PIEZOによるNLRP3インフラマソームの活性化の分子メカニズムを明らかにするために、ゲノムワイドCRISPR-Cas9を利用したKOスクリーニングを行った結果、KCNN4が同定された。KCNN4は、赤血球の細胞力覚においてPIEZO1の下流で機能する分子として明らかにされているが、PIEZOによるNLRP3インフラマソームの活性化ならびにCAPS 型変異によるNLRP3の活性化増強に関与することが明らかとなった。

推薦者コメント

免疫細胞は、血管外漏出や細胞間の通り抜けに伴うずり応力や静水圧など様々な力学的環境に晒されている。この力学的環境による免疫細胞の調節機構としては、従来研究ではTRPV4を介したNLRP3インフラマソームの活性化が示されていたが、今回は新たにPIEZO/KCNN4/NLRP3制御系の重要性が明らかとなった。今後、免疫細胞における細胞力覚の意義がさらに明らかにされることで、CAPSなどの免疫系疾患の緩和や予防に向けた新しいアプローチの創出につながることが期待される。
(同志社大学大学院生命医科学研究科医生命システム専攻・畑野 晃徳、西川 恵三)