骨発生における骨芽細胞前駆細胞の動員と血管新生はYAPとTAZが媒介する機械的刺激を介して連関する
著者: | Collins JM, Lang A, Parisi C, et al |
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雑誌: | Dev Cell. 2024; 59(2):211-227. |
- 骨発生
- 血管
- 機械的刺激
論文サマリー
骨発生部位に出現する軟骨原基の辺縁部には、Osx陽性の骨芽細胞前駆細胞(pre-OB)が存在し、これが血管と共に原基に侵入して一次骨化中心の構築に寄与する。この過程において、pre-OBは機械的刺激による制御を受けることが知られているが、そのメカニズムは良くわかっていない。本論文では、機械的刺激を媒介する転写因子YAP/TAZが、pre-OBで機能し、血管新生を制御することを下記のデータより示した。① YAP/TAZをOsx-creで発現抑制したマウス(Osx-Y/T-KO)では、一次骨化中心の形成が抑制されたが、原基周囲の骨形成は正常であった。② 血管に近接したpre-OB(VOP)は、血管制御因子であるCXCL12の発現が有意に高く、Osx-Y/T-KOではその発現低下が認められた。③ Osx-Y/T-KOでは、血管分布およびバリアー機能の障害が認められた。④成長板の軟骨・骨接合部におけるループ状の血管構造は、肥大軟骨細胞層のリモデリングに寄与するが、Osx-Y/T-KOではこの構造が低下していた。⑤ ヒト由来細胞培養系において、間葉系細胞は血管ネットワークの構築を支持するが、間葉系細胞におけるYAP/TAZの欠損により、その支持能が消失した。一方、CXCL12の添加は、これをレスキューした。⑥ 機械的刺激は、一次骨化中心の硬組織形成を促進し、Osx-Y/T-KO ではその作用が消失することをex vivoの実験系で示した。
推薦者コメント
VOPの機械的刺激を介した血管制御機構を示した興味深い論文である。VOPは、骨の発生時期に加えて骨修復過程においても観察される(Dev Cell 19:329-344, 2010)。したがって、骨修復時における機械的刺激を介したVOPの血管制御、ひいては骨修復に対する機能発現については興味深く、今後の検討が待たれる。
(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口 利英)
(2024年3月28日)