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ANGPTL4はレプチン受容体に結合して異所性骨形成を誘導する

ANGPTL4 binds to the leptin receptor to regulate ectopic bone formation.
著者:Xia L, Zhou W, Jiang Y, et al
雑誌:Proc Natl Acad Sci U S A. 2024; 121(1):e2310685120
  • LepR
  • 異所性骨
  • ANGPTL4

論文サマリー

レプチン(Lep)は、食欲に加え、中枢および末梢性に骨代謝を制御する。一方、腱や靭帯が損傷を受けた際に、その修復過程に軟骨内骨化を介した異所性骨が誘導されるケースが問題となっている。本論文では、腱の損傷にともなう異所性骨の誘導はLep受容体(LepR)を介して惹起され、その際に機能するリガンドはLep以外の分子であることを以下のデータより明らかにした。① LepR機能欠失変位マウス(db/db)とLep機能欠失変位マウス(ob/ob)の腱を損傷させた結果、db/dbのみで異所性骨の形成が消失した。② LepR陽性細胞の枯渇、もしくはPrrx1-creを用いて異所性骨の前駆細胞特異的にLepRを発現抑制すると、腱損傷にともなう異所性骨誘導が消失した。③ 腱損傷後に、褐色脂肪細胞由来のANGPTL4発現が上昇し、LepRのリガンドとして機能することを、in vitro培養およびANGPTL4欠損マウスを用いた実験により示した。④ ANGPTL4/LepRシグナルは、STAT3を介して異所性骨を誘導することが示唆された。

推薦者コメント

腱損傷後の異所性骨の形成メカニズムを、LepRに対する新たなリガンドANGPTL4を見出して説明した興味深い論文であり、新規治療標的の創出に繋がる可能性も包含する。一方、骨格幹細胞におけるLepRの子孫細胞分化に対する役割については未だ結論には至っていない。骨損傷時においてもANGPTL4の発現が上昇するのであれば、これが骨格幹細胞のLepRに作用して骨修復に働く可能性も考えられる。今後の研究が待たれる。
(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口 利英)