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ギラン・バレー症候群では自己反応性T細胞が末梢神経を標的とする

Autoreactive T cells target peripheral nerves in Guillain–Barré syndrome
著者:L. Súkeníková, A. Mallone, et al
雑誌:Nature. 2024; 6:160-168
  • 末梢神経障害
  • 自己免疫
  • T細胞

論文サマリー

ギラン・バレー症候群(GBS)は多発性の末梢神経障害をきたす疾患であり、ミエリンに対する自己免疫疾患として考えられている。一方、ウイルス感染や細菌感染が契機となって発症することが指摘されているものの、発症に関わる自己反応性T細胞の実態は明らかでない。著者らはGBS患者の末梢血を用いて、ミエリン抗原刺激による網羅的なin vitro T細胞スクリーニングを実施した結果、細胞傷害性のTh1細胞様表現型を示すミエリン反応性メモリーCD4細胞が高頻度で認められた他、ミエリン反応性CD8 T細胞も一定の割合で実在することを明らかにした。それらのT細胞性質を詳細に解析した結果、ポリクローナルなTCRレパートリーを有すること、自己抗原反応性を示すCDR3βが短いという特徴を持っていることも判明した。また自己反応性T細胞クローンがGBSの異なる患者間で血中・脳脊髄液中に検出され、興味深いことにサイトメガロウイルスとミエリンの両方に反応するT細胞クローンも検出された。患者1名の神経生検でもミエリン反応性CD4 T細胞が同定され、こうした自己反応性T細胞のGBS病態への関与を支持するデータと言える。以上より、GBS患者における自己反応性T細胞の多様なクローンの性質が明らかにされ、サイトメガロウイルス抗原と交差反応を示すT細胞クローンの病的関与の可能性も示唆された。

推薦者コメント

ヒトT細胞研究の権威であるF. Sallustoのグループによる研究であり、彼女らが確立したin vitro T細胞スクリーニングを駆使した莫大なデータに基づく成果である。Last authorのD. Latorreは以前、ナルコレプシー患者における自己反応性T細胞クローンを筆頭著者としてNatureに報告しており、こうした研究手法は今後も様々な疾患研究に貢献すると期待される。
(東京大学大学院医学系研究科骨免疫学寄付講座・岡本 一男)