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GLI1はDNAメチルトランスフェラーゼを介してマウスのコラーゲン誘導性関節炎に促進的に働く

GLI1 facilitates collagen-induced arthritis in mice by collaborative regulation of DNA methyltransferases
著者:Ge G, Guo Q, Zhou Y, et al.
雑誌:eLife. 2023; 12:e92142
  • 関節リウマチ
  • GLI1
  • DNAメチルトランスフェラーゼ

論文サマリー

 関節リウマチ(RA)はM1マクロファージと破骨細胞の過剰活性化による滑膜炎と骨破壊を特徴とする。本研究はマクロファージの表現系の変化と破骨細胞の活性化におけるヘッジホッグ応答性転写因子GLI1の役割について検討した。RA患者の滑膜では健常者のものと比べてGLI1陽性細胞の増加を認めた。コラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスにGLI1阻害剤GANT58を投与すると関節炎スコアが有意に減少し、炎症性細胞浸潤と骨破壊が抑制された。in vitro誘導系における機能喪失実験により、M1マクロファージと破骨細胞の誘導におけるGLI1の関与が支持された。RAW264.7細胞のRNA-seq解析からDNMTがGLI1の標的遺伝子である可能性が示唆され、CIAマウスへのDNMT阻害剤の投与によって骨破壊は抑制された。RAW264.7細胞におけるGANT58のM1マクロファージ誘導抑制効果はDnmt1の過剰発現により減弱することから、炎症性細胞に対するGLI1の生物学的機能をDNMT1が担っていることが示された。

推薦者コメント

 関節炎の原因であるマクロファージおよび破骨細胞の活性化において、GLI1がDNMT1を介して促進的に機能することが示され、in vivoでGANT58の抗炎症効果や骨破壊抑制効果が確認できたことにより、RAの治療標的としての応用が期待される。しかしながら、RAにおいてGLI1を誘導するヘッジホッグリガンドは不明なままであり、GANT58がマクロファージや破骨細胞以外の骨組織中の細胞に影響を及ぼす可能性も考えられるため、さらなる検討が必要である。
(大阪大学大学院歯学研究科組織発生生物学講座 辻麻美・大庭伸介)