頭蓋縫合早期癒合症や頭蓋骨の石灰化の基盤となる複数の幹細胞
A multi-stem cell basis for craniosynostosis and calvarial mineralization
著者: | Bok S, Yallowitz AR, Sun J, et al. |
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雑誌: | Nature. 2023; 621(7890):804-812 |
- 頭蓋骨
- 幹細胞
- 頭蓋骨縫合早期癒合症
論文サマリー
本研究では頭蓋骨幹細胞(Calvarial stem cell: CSC)に注目し、頭蓋縫合早期癒合症や、頭蓋骨の石灰化の機序を明らかにすることを試みた。Cathepsin K(Ctsk)陽性CSCにおいてTwist1を欠失させたマウスでは頭蓋縫合早期癒合症の形質が再現された。癒合部では異所性の軟骨内骨化を認め、CTSK+ CSCの枯渇に伴ってDDR2 (discoidin domain-containing receptor 2)+ CSCが増加していた。CTSK+ CSCとDDR2+ CSCは、それぞれ膜内骨化と骨髄形成を伴わない軟骨内骨化の誘導能を有した。DDR2+ CSC欠失マウスでは石灰化不全を認めたことから、DDR2+ CSCも正常頭蓋骨発生に必須であることが示唆された。ヒトの頭蓋縫合早期癒合症や、ヒトCTSK+ CSCおよびDDR2+ CSCのマウス腎被膜下移植実験でも同様の傾向が認められた。
推薦者コメント
2018年にCtsk陽性の骨膜幹細胞の存在を報告したグループ(Debnath S et al. Nature 562(7725):133-139, 2018)による論文である。本研究では、CTSK+ CSCの枯渇に伴ってDDR2+ CSCが優位になることで頭蓋縫合早期癒合症をきたすことが明確に示された。ヒトの頭蓋縫合早期癒合症でも同様の傾向が見られたため、DDR2+ CSCが治療標的となりうる可能性が示唆された。
(大阪大学大学院歯学研究科組織発生生物学講座 池田悠希・大庭伸介)