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Grem1系譜の軟骨前駆細胞の欠失は変形性関節症を引き起こす

Loss of Grem1-lineage chondrogenic progenitor cells causes osteoarthritis.
著者:Ng JQ, Jafarov TH, Little CB, et al.
雑誌:Nat Commun. 2023; 14: 6909.
  • 変形性関節症
  • Grem1
  • 軟骨前駆細胞

論文サマリー

 変形性関節症 (OA) は、関節軟骨の不可逆的な変性が問題となる。今回筆者らは、BMP アンタゴニストであるGremlin 1 (Grem1) が、関節表面内の軟骨と骨芽細胞に分化できるbipotentialな骨形成前駆細胞集団をマークできることを示した。この前駆細胞は半月板不安定化誘導性のOAや加齢によって減少し、Grem1発現細胞を除去するとOAが引き起こされることもわかった。マウスにおけるトランスクリプトーム解析により、関節表面のGrem1系譜の細胞がFoxo1に依存しており、Grem1発現細胞特異的にFoxo1を欠失しても OAが引き起こされることが示された。また、Grem1発現細胞はFGFR3も発現していたため、FGFR3のリガンド、FGF18の投与実験を行ったところ、Grem1 系譜の軟骨細胞前駆細胞の増殖、軟骨の肥厚、OA症状の軽減が観察された。

推薦者コメント

 論文では、関節表層に存在するGrem1系譜細胞が、成長版に存在する骨格前駆細胞とは部分的に異なっていることも示している。このGrem1系譜細胞が関節軟骨を産生し、この細胞が加齢あるいは摩耗などにより減少するとOAにつながりうることを示した。また、関節表層に存在するGrem1系譜細胞は、現在臨床治験中であるFGF18の受容体も発現していることがわかった。関節表層に存在する前駆細胞の維持や活性化がOA症状の改善に有用であることが示された。
(東京大学医学部附属病院 骨・軟骨再生医療講座・寺島 明日香)