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Sfrp4はカテプシンK系譜骨膜幹細胞の微小環境機能の維持に必要である

Sfrp4 is required to maintain Ctsk-lineage periosteal stem cell niche function.
著者:Chen R, Dong H, Raval D, Maridas D, Baroi S, Chen K, Hu D, Berry SR, Baron R, Greenblatt MB, Gori F.
雑誌:Proc Natl Acad Sci U S A. 2023 Nov 14;120(46)
  • Sfrp4
  • 骨膜
  • カテプシンK系骨膜幹細胞

論文サマリー

 骨膜は、皮質骨の成長や、恒常性の維持、骨修復、および骨形成医薬品に反応する幹細胞の貯蔵庫である。しかし、骨膜微小環境の幹細胞を制御する局所因子やパラクライン因子は未だ解明されていない。Sfrp4遺伝子変異はヒトのパイル病の原因であり、これは太い骨幹端と皮質骨の菲薄化による四肢の変形、および脆弱骨折リスクの増加を主徴とする。著者らはSfrp4欠損マウスの解析から、Sfrp4が骨膜の骨形成に関与することを見出し、Sfrp4が骨膜幹細胞の制御に関与しているのではないかと考えた。本研究では、Sfrp4はカテプシンK系譜骨膜幹細胞に発現し、Sfrp4欠損は骨膜幹細胞プールを減少させ、多分化能や骨オルガノイド形成を障害することを示した。RNA-seq解析では、Sfrp4欠損は骨格の発生や骨ミネラル化、創傷治癒に関するシグナル伝達経路を低下させることが示された。さらに、Sfrp4欠損は骨損傷による骨膜反応を阻害し、カテプシンK系譜骨膜幹細胞の動員を障害すること、PTHによる皮質骨増加を著しく妨げることを示した。これらの結果から、Sfrp4がカテプシンK系譜骨膜幹細胞の分化と機能の制御において中心的な役割を担うことが示唆された。

推薦者コメント

 皮質骨形成の制御メカニズムは海面骨形成に比べて未だ不明な点が多い。本研究は、パイル病の表現系から骨膜幹細胞に注目し、原因遺伝子あるSfrp4が骨膜幹細胞を制御することで骨形成を制御するメカニズムを明らかにした点において重要である。特に、Sfrp4欠損マウスでは脆弱ではあるものの皮質骨が形成されるのに対し、骨膜幹細胞特異的Sfrp4欠損により、骨折後やPTHに対する骨形成反応がほとんど消失している点は興味深かった。病的な状態や骨質制御におけるSfrp4のメカニズムにも今後注目していきたい。
(岡山理科大学獣医学部獣医学科実験動物学講座 永戸ゆり子・伊豆弥生)