シングルセル解析により、ゼブラフィッシュの腱細胞再生における線維芽細胞の可塑性が明らかになった
著者: | Arsheen M. Rajan , Nicole L. Rosin , Peng Huang et al |
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雑誌: | Science Advances. 2023 Nov 17; 9(46) |
- 線維芽細胞
- ゼブラフィッシュ
- ヘッジホッグ
論文サマリー
線維芽細胞は、組織の維持と修復において重要であるにもかかわらず、その多様性と可塑性についてはまだ十分に理解されていない。本研究では、ゼブラフィッシュの損傷モデルを用いて、シングルセル解析、lineage tracing解析、クローン解析を行い、6つの線維芽細胞のサブタイプを同定した。ゼブラフィッシュの腱再生モデルでは、血管周囲線維芽細胞(perivascular fibroblast)と間質線維芽細胞(Interstitial fibroblast)のサブセットが傷害部位に遊走し、増殖するとともに、Tenomodulin陽性腱細胞へと分化し、新しい腱再生に寄与することが明らかになった。この時、腱細胞やpericyte、間葉系幹細胞は傷害時の腱細胞分化には関わっていなかった。また、腱再生中の線維芽細胞の増殖にはヘッジホッグシグナルが重要な役割を果たしていることも見出した。
推薦者コメント
本研究は、腱が傷害を受けた時に、どの細胞がどのタイミングで活性化し、腱細胞へと分化するのか、in vivoでlive imagingで明らかにしている点が興味深かった。また、ヘッジホッグシグナルが腱再生における線維芽細胞の増殖を制御することが示されていたが、細胞遊走制御については言及していなかったので、今後、創傷治癒における幹細胞の遊走制御メカニズムについても注目していきたい。これまでにマウスにおいても腱再生に寄与する細胞群が同定されているが、これらの細胞との類似性や関連性、オリジンの違いなどが明らかにされていない。今後、生物における普遍的なメカニズムが解明されることを期待したい。
((岡山理科大学獣医学部獣医学科実験動物学講座 藤原渓・伊豆弥生)