父親がメトトレキサートに暴露されると精子の短鎖RNAの含量に影響を及ぼし、その子孫に頭蓋顔面異常を引き起こす
Paternal methotrexate exposure affects sperm small RNA content and causes craniofacial defects in the offspring
著者: | Alata Jimenez N, Castellano M, Santillan EM et al. |
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雑誌: | Nat Commun. 2023; 14: 1617 |
- メトトレキサート
- 頭蓋軟骨
- 短鎖RNA
論文サマリー
葉酸の阻害剤であるメトトレキサート(MTX)を母親に曝露した場合、催奇形成のリスクがあることが知られている。一方、父親にMTXを曝露した際の影響については不明であった。著者らは、MTXを投与したメダカの精子と正常な卵子を受精させ、子孫の頭蓋軟骨が異常な形状になることを見出した。また、MTX処理を行ったサンプルは、tRNA断片の長さが長いこと、特定の5'tsRNA断片の量が増加しているなど、tRNA断片に影響を及ぼしていることを突き止めた。さらにMTX処理を行ったサンプルは、tRNAのm5C修飾と精巣のDnmt2発現が増加していることを示した。MTX処理を行った精子から短鎖RNAを抽出し、受精卵に注入したところ、頭蓋軟骨の形状の変化が確認された。これらの結果は、父親へのMTX曝露は精子のtRNAのメチル化と子孫の頭蓋軟骨の形成に影響を及ぼすことを示唆している。
推薦者コメント
MTXは免疫疾患や悪性腫瘍等の医薬品として広く用いられているが、父親への投与による子孫への影響は知られていなかった。本研究により父親にMTXを曝露した場合、精子の短鎖RNAに影響を与え、子孫の頭蓋軟骨の異常を引き起こす可能性があることが示された。著者らは、父親にMTXを曝露した場合の長期的な影響を示した。今後は、tRNAの修飾が初期胚に与える影響のメカニズムの解明が期待される。
(岐阜薬科大学機能分子大講座薬理学研究室・田中優妃・檜井栄一)