「骨年齢」は骨折による死亡リスクを評価する新しい概念である
著者: | Tran T, Ho-Le T, Bliuc D, et al |
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雑誌: | Elife. 2023; 12: e83888. |
- 骨年齢
- 骨折
- 死亡リスク
論文サマリー
骨粗鬆症の治療率や治療継続率が低い一因として、患者が脆弱性骨折と死亡リスクの関連性を理解できる指標がなく、骨折予防の重要性を認識していない可能性が考えられる。著者らは、骨折による死亡リスクを評価する指標として「骨年齢」を提唱し、骨折部位ごとの骨年齢を算出することを目的とした。50歳以上のデンマークの成人約1,700万人を対象とした後ろ向きコホート解析により、非骨折群と比べて骨折群では、死亡ハザード比が男性で1.46 (95% CI: 1.45, 1.48)、女性で1.28 (95% CI: 1.27, 1.30)と有意に高かった。また、男女ともに股関節、大腿骨、骨盤、脊椎、上腕骨、肋骨、鎖骨、下腿骨の各骨折群は、非骨折群と比べて死亡ハザード比が有意に高かった。さらに、骨折部位ごとに骨年齢を算出した結果、骨折部位が股関節では最大で約7年、大腿骨・骨盤・脊椎・上腕骨では最大で約5年、肋骨・鎖骨・下腿骨では最大で約3年の寿命が喪失することが示された。
推薦者コメント
骨年齢は、患者が骨折後の死亡リスク増大の危険性を理解するとともに、脆弱性骨折に対する予防と治療の重要性を認識するための一助となりうる。実年齢とは別の指標である「肺年齢」や「心臓年齢」を用いることで、臨床効果が向上することが報告されているため(Kulendrarajah B, Grey A, Nunan D. BMJ Evid Based Med. 2020; 25: 68–72)、骨年齢の有用性に関して非常に興味深い。今後、骨年齢の実用化に向けた詳細な検証を期待したい。
(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室・吉本 誠・檜井 栄一)