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マルチパラメトリック老化細胞表現型解析により明らかになった老化マウス骨における老化細胞除去治療の標的

Multiparametric senescent cell phenotyping reveals targets of senolytic therapy in the aged murine skeleton
著者:Doolittle ML, Saul D, Kaur J, et al.
雑誌:Nat Commun. 2023, 14: 4587.
  • 老化細胞除去
  • p16
  • CD24

論文サマリー

 細胞老化は個体の老化を促進するが、生体内における老化細胞の詳細な解析はまだ不完全である。本研究で著者らは、マスサイトメトリーによる老化細胞の解析を行った。慎重に検証したp16やp21抗体により解析したところ、p16+細胞は加齢とともに増加する一方、p21+間葉系細胞は加齢との相関は観察されなかった。若齢および老齢マウスから採取したp16+間葉系細胞の多次元クラスタリングを行ったところ、増殖が停止しアポトーシスに抵抗性を示す老化間葉系細胞としてp16+Ki67–BCL-2+細胞(p16KB細胞)を同定した。p16KB細胞は老化、SASP、DNA損傷の多数のマーカーの発現上昇を示し、若齢マウスではごくわずかであったが、加齢に伴って著しく上昇した。次に、どの間葉系骨格細胞集団が加齢とともに老化細胞となるかを評価するため、細胞クラスタリングを行ったところ、CD24high骨芽系列細胞(CD24+/Runx2+/Osterix+)はSASP関連遺伝子発現に加えて、アポトーシスに対する抵抗性を持つことが示唆された。さらに、後期骨芽細胞/骨細胞およびCD24high骨芽系列細胞集団は、老化マウスにおいてINK-ATTACマウスを用いた遺伝的老化細胞除去や、ダサチニブ+ケルセチンによる老化細胞除去治療により取り除かれる集団であることが明らかにされた。骨髄Lin–CD24+細胞をin vitroで解析したところ、増殖停止、SA-β-gal陽性、低いコロニー形成能や骨形成能を示した。これらの結果から、CD24high骨芽系列細胞は、他の骨格細胞集団と比較して、顕著な老化および炎症プロフィールを示し、骨細胞に加えて老化細胞除去治療の重要な標的であることが明らかになった。

推薦者コメント

 骨細胞に加えてCD24high骨芽系列細胞が骨格における老化細胞集団であることが示された。CD24は、ストレスや免疫シグナル伝達において役割を持つ細胞表面マーカーであり、多くの免疫細胞(特にB細胞)でも発現していることから老化細胞の検出に応用できるのは間葉系細胞に限られる点に注意が必要である。また、本研究により骨においてp16KB細胞は加齢に伴う老化に寄与し、p21KB細胞はUVなどの傷害による急性老化においてより重要な役割を担っている可能性が示唆された。
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学分野・林 幹人)