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糖輸送体Slc37a2は破骨細胞の管状リソソームネットワークを介してマウスの骨代謝を調節する

Sugar transporter Slc37a2 regulates bone metabolism in mice via a tubular lysosomal network in osteoclasts
著者:Ng PY, Ribet ABP, Guo Q, et al.
雑誌:Nat Commun. 2023, 14: 906.
  • 分泌リソソーム
  • Slc37a2
  • 波状縁

論文サマリー

 破骨細胞は、骨吸収のために分泌リソソーム(SL)と呼ばれる特殊なリソソーム関連小器官を有していることが知られている。SLにはカテプシンKなどが含まれ、膜上にはClC-7やV-ATPaseが存在し、破骨細胞の波状縁の膜前駆体として機能するが、SLの分子構成や時空間的な構造化過程については不明な点が残されていた。本研究で著者らは、リソソームのプロテオミクス解析によりSlc37a2を同定した。Slc37a2はGWAS解析で骨密度に有意な関連性を示す糖輸送体である。Slc37a2はRANKL刺激によって破骨細胞で発現誘導されるタンパク質で、細胞質全体に放射状に広がる管状小器官ネットワークに局在していた。これらのSlc37a2+管状小器官の内腔は酸性で、カテプシンKが含まれ、骨側の細胞膜に向かって伸び、長時間接触した後、一過性に融合し、その後急速に後退している様子が観察された。Slc37a2欠損マウスの骨を調べたところ、破骨細胞による骨吸収の低下と、骨リモデリング異常による骨形成の不均衡により、高骨量の表現型を示すことが明らかにされた。また、これらのマウスは卵巣摘出による骨量減少にも耐性を示した。Slc37a2が破骨細胞活性を制御するメカニズムを調べるため、細胞内定量的メタボロームプロファイリングを行ったところ、D-グルコースやD-フルクトースが上昇していることが明らかにされた。様々な解析の結果、骨吸収の際にSlc37a2がSLから単糖の輸送を促進することでSLの管状化を促し、骨表面の細胞膜に輸送して分泌させ、破骨細胞の波状縁を維持することが明らかにされた。

推薦者コメント

 Slc37a2が破骨細胞SLの必須構成因子であり、Slc37a2を介したグルコースとフルクトースのエクスポートが、浸透圧による水のSLから流出を促進し、その結果、SLの管状化と骨表面細胞膜または波状縁への輸送が促進されることが示された。著者らは、従来想定されていた酸性化小胞の融合を介した波状縁形成過程ではなく、SLが微小管と協調して伸長し、波状縁の狭い内腔に入り込んで小胞輸送に必要な管状化を起こすというモデルを提唱した。
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学分野・林 幹人)