アクチン結合タンパク質Adseverinは肥大軟骨細胞の分化と変形性関節症の進行を調節する
Adseverin, an actin-binding protein, modulates hypertrophic chondrocyte differentiation and osteoarthritis progression
著者: | Chan B, Glogauer M, Wang Y, et al. |
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雑誌: | Sci Adv. 2023; 9 :eadf1130. |
- Adseverin
- 軟骨細胞
- 変形性関節症
論文サマリー
変形性関節症(OA)では、アクチン細胞骨格の変化と相関した関節軟骨細胞の表現型変化が生じる。アクチンの切断タンパク質であるAdseverinを欠損したマウスの関節軟骨では、F-アクチンとアグリカンの発現が減少する一方、軟骨細胞のアポトーシス増加やIndian hedgehog、Runx2、MMP13、type X collagenの発現上昇、軟骨細胞の増殖亢進が生じており、軟骨細胞の機能が低下していた。これにより、軟骨の硬化やヒアルロン酸の減少、石灰化軟骨厚の増加が誘導された。また、これらの変化は、外科的にOAを誘発したAdseverin欠損マウスにおける関節軟骨のOA重症度を高める要因になると推測された。Adseverin欠損マウス軟骨細胞のRNA-seq解析およびin vitro実験の結果、Adseverinは軟骨細胞の生存調節と石灰化抑制に寄与することが推測された。以上のことから、Adseverinは、軟骨細胞の肥大化を阻止することで、関節軟骨の恒常性を維持する可能性が示唆された。
推薦者コメント
変形性関節症で生じる関節軟骨基質や軟骨細胞の異常の一因として、軟骨細胞のアクチン骨格異常が寄与する可能性、また、これら軟骨細胞のアクチン骨格解重合にはAdseverinが関与する可能性が示された。本結果は、変形性関節症の病理機序解明につながるとともに、Adseverinが変形性関節症の治療標的になりうると期待される。
(北海道大学大学院歯学研究院硬組織発生生物学教室・長谷川 智香)