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オステオレクチンは成長板軟骨の軟骨細胞増殖を促進することで、骨伸長と身長を増加させる。

Osteolectin increases bone elongation and body length by promoting growth plate chondrocyte proliferation
著者:Zhang J, Du L, Davis B, et al.
雑誌:Proc Natl Acad Sci U S A. 2023;120:e2220159120.
  • osteolection
  • Integrinα11
  • 軟骨内骨化

論文サマリー

 Integrinα11と結合するオステオレクチン(osteolection)は、骨髄間質細胞におけるWnt経路の活性化と骨芽細胞分化を促進する。これまで、osteolectinが成獣マウスの骨量維持に必要であるという報告はなされていたが、成長期の骨格形成に与える影響、また、ヒトにおけるosteolectinの影響は明らかにされていなかった。今回、筆者らは、osteolectinが成長期マウスにおいて、成長板軟骨細胞の増殖を増加させることで骨成長(伸長)を促進し、体長を増加させることを明らかにした。また、ヒトのゲノムワイド関連解析から、osteolectin下流の一塩基変異体(rs182722517)が身長低下と血漿osteolection濃度低下と関連すること、また、同変異を生じたヒト骨髄間質細胞ではosteolectionの発現が低下することを示した。このことから、osteolection/ Integrinα11が、マウスおよびヒトの骨成長と体長/身長を制御する因子であることが明らかにされた。

推薦者コメント

 Osteolectinは、筆者らのグループから2016年に報告されたC型レクチン様ドメイン含有蛋白であり(eLife, 5: e18782, 2016)、骨髄間質細胞や骨芽細胞、成長板軟骨細胞で発現すること、また、間葉系前駆細胞から成熟骨芽細胞への分化を促進することで骨を維持していることが明らかとされていた。今回の研究で、osteolectionが成長板軟骨細胞の増殖を誘導すること、すなわち、軟骨内骨化にも寄与する因子であることが明らかにされたことは大変興味深く、今後、骨成長障害を伴う疾患の治療標的にもなりうると期待する。
(北海道大学大学院歯学研究院硬組織発生生物学教室・長谷川 智香)