日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

Brave heart

TOP > Hot paper > 黒嶋 伸一郎

骨格筋発生の方向性はメカニカルストレスにより決定される

Directionality of developing skeletal muscles is set by mechanical forces
著者:Sunadome K, Erickson AG, Kah D, et al
雑誌:Nat. Commun. 2023; 14(1):3060.
  • 筋原線維
  • メカニカルストレス
  • 細胞極性

論文サマリー

 配向を伴う筋原線維の形成は筋骨格発生の重要なイベントだが、成人における筋肉の方向性制御のための、筋細胞配向化と融合の駆動メカニズムは不明である。本研究では、ゼブラフィッシュとマウスの四肢と顔面形態形成中に、骨格の発達が骨格筋や軟組織の方向性の成長を誘導することを見出した。タイムラプスライブイメージでは、初期の頭蓋顔面発生中に、筋芽細胞が将来の筋肉群に相当する部位(round cluster)に凝縮することが明らかとなった。これらのクラスターは、胚の成長中に方向性を伴いながら伸張して配列する。軟骨のパターン形成や大きさの遺伝的摂動は、筋原線維の方向性と数を変動させる。筋骨格の付着点をレーザーで切除すると、軟骨が拡張して形成中の筋線維に加わる張力が明示され、人工付着点または伸縮性膜基質で連続的に張力を与えると、筋細胞集団に十分な極性化が誘導された。

推薦者コメント

 本研究結果から、筋細胞の極性決定と頭蓋顔面における筋骨格の構成要素確立に対して、いままで分からなかったメカニカルストレスが鍵となることが証明された。メカニカルストレスは種々の細胞極性に影響を与えることが示されているが、本研究でもメカニカルストレスによる筋細胞の配向化機構が明らかになったことで、生物工学、組織工学、ならびに生体力学的観点から非常に重要な知見であるといえる。
(長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野・黒嶋 伸一郎)