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骨髄のAdipoq系前駆細胞は,骨髄マクロファージの発生,破骨細胞形成,ならびに骨量を制御するM-CSFの主要な供給源である

Bone marrow Adipoq-lineage progenitors are a major cellular source of M-CSF that dominates bone marrow macrophage development, osteoclastogenesis, and bone mass
著者:Inoue K, Qin Y, Xia Y, et al
雑誌:Elife 2023; 12:e82118.
  • AdipoQ発現前駆細胞
  • 骨髄マクロファージ
  • M-CSF

論文サマリー

 M-CSFは、単球、マクロファージ、破骨細胞などの骨髄系細胞に重要な成長因子だが、骨髄恒常性維持のために、どの細胞がM-CSFを産生するかは不明である。本研究では、骨髄や成熟脂肪細胞ではなく、Adipoq系前駆細胞がM-CSFの主要な供給源であり、骨芽細胞系細胞によるM-CSF産生レベルよりはるかに高いレベルで産生されることを見出した。マウスの骨髄Adipoq系前駆細胞におけるM-CSF欠損は、骨髄MΦと破骨細胞形成を著しく減少させ、重篤な大理石病を惹起する。卵巣摘出マウスでは、骨髄Adipoq系前駆細胞におけるM-CSF欠損で骨粗鬆症が大幅に緩和される。したがって、骨髄Adipoq系前駆細胞は骨髄におけるM-CSFの主要な供給源であり、骨髄MΦの発生、破骨細胞形成、骨恒常性、ならびに病的骨量減少に決定的な役割を果たすことが明らかとなった。

推薦者コメント

 近年、マクロファージのサブタイプやその機能に焦点を当てた多面的な網羅解析が多く行われるようになっているが、本研究では、骨髄微小環境下において、マクロファージに必要不可欠なM-SCFを供給する主たる細胞がAdipoq系前駆細胞であることが多角的に示されている。本研究結果は、骨髄における幹細胞/前駆細胞や骨リモデリングなどを対象としている研究者にとって、非常に興味深い論文であろう。
(長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野・黒嶋 伸一郎)