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腎性骨異栄養症マウスにおいてHNF4α2は骨形成を促進し骨病変を防ぐ

Transcription factor HNF4α2 promotes osteogenesis and prevents bone abnormalities in mice with renal osteodystrophy
著者:Martinez-Calle M, Courbon G, Hunt-Tobey B, et al.
雑誌:J Clin Invest. 2023; 133: e159928
  • CKD
  • ROD
  • HNF4α

論文サマリー

 腎性骨異栄養症(ROD)は,ほぼ全ての慢性腎臓病(CKD)患者が罹患する骨代謝異常であり,骨折のみならず,心血管イベント,死亡など不良な予後と関連する。本研究で著者らは,RODを有するCKD患者の骨生検組織をRNAシーケンスにより解析し,RODの病型・骨代謝回転の程度に関わらず,主に肝臓に発現する転写因子hepatocyte nuclear factor 4α(HNF4α)が著明に低下していることを見い出し,同様の現象をRODのモデルマウスでも確認した。骨芽細胞特異的にHnf4αを排除すると,細胞レベルでも個体レベルでも骨形成が障害された。Hnf4α1またはHnf4α2を排除あるいは過剰発現させた骨芽細胞株MC3T3-E1のマルチオミクス解析により,HNF4α2が骨形成,細胞代謝,細胞死を制御する主なアイソフォームであることが示された。CKDマウスにおいて骨芽細胞特異的にHnf4αを過剰発現させると,骨量低下を防ぐことができた。以上の結果より,HNF4α2は骨形成の転写制御因子であり,RODの病態形成に関与していると考えられる。

推薦者コメント

 RODは,CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)を背景に,二次性副甲状腺機能亢進症による高回転型骨病変や活性型ビタミンD低下に起因する骨石灰化障害をきたすことが主な病態と考えられている。しかし,これらに対する治療のみではCKD患者の骨折リスクを十分に抑えることはできておらず,他の病態の関与が想定されてきた。本研究で見出されたHNF4α2の役割は,まさにCKD患者の骨病変の新たな病態を明らかとするものであり,新たな治療標的となる可能性が期待される。本研究では炎症が骨芽細胞のHnf4α発現を抑制することが示されたが,CKD患者でHnf4α発現が低下する機序の全容は明らかではない。Hnf4α発現の誘導を目指す上で今後の重要な検討課題になると思われる。(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科学・駒場 大峰)