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Shnurri-3の阻害は、関節リウマチモデルにおける骨関節損傷を抑える

Schnurri-3 inhibition suppresses bone and joint damage in models of rheumatoid arthritis
著者:Zheni Stavrea, Jung-Min Kim, et al
雑誌:Proc Natl Acad Sci U S A. 2023; 120:e2218019120
  • 関節リウマチ
  • 骨形成
  • 骨吸収

論文サマリー

 関節リウマチの現行の治療薬は炎症および骨吸収を標的とした薬剤が占めるが、関節局所のみならず全身性骨粗鬆症の制御という観点からも、骨形成促進薬の開発は重要な課題である。Schurri-3は、骨芽細胞で発現する強力な骨形成阻害因子として知られ、その欠損マウスは骨形成亢進により顕著な骨量増加を示す。本論文では、関節炎においてTNFやIL-17といった炎症性サイトカインにより、骨芽細胞にてSchurri-3発現が上昇し、それが骨量減少に関与することが示された。実際Schurri-3欠損マウスに関節炎モデルを誘導すると、炎症の程度は影響を受けないが、関節の骨びらん形成及び大腿骨の骨量低下が抑えられ、組織学的には破骨細胞数の減少と成熟骨芽細胞数の増加が認められた。同様の結果は、Schurri-3に対するmiRNAを搭載した骨指向性アデノ随伴ウイルスベクター(著者らが以前報告)を投与した際にも認められた。さらにPrx1-Creによる四肢間葉系細胞特異的Schurri-3欠損マウスの解析を通じて骨芽細胞系統におけるSchurri-3が重要であること、並びにSchurri-3欠損によりRANKL発現とRANKL/OPG比が低下することが示された。機序としては、TNF下流で活性化されるERKによりSchurri-3がリン酸化を受けると、WNT/β-cateninシグナルを抑制するとともにRANKL発現を誘導すると結論づけられている。以上より、Schurri-3は関節リウマチの骨吸収亢進と骨形成低下を共に阻害する創薬ターゲットとして有望であることが示された。

推薦者コメント

 以前より著者らはSchurri-3に関する研究を続けており、Schurri-3阻害が骨量減少抑制に有効であることを示してきた。本論文はその延長線上にある。滑膜線維芽細胞でSchurri-3発現が高いという過去の報告があること、Prx1-Creでは線維芽細胞の関与を排除できないことから、滑膜線維芽細胞におけるSchurri-3の解析がやや乏しいという感は否めないが、いずれにしろSchurri-3の阻害が慢性炎症に伴う骨量減少を食い止めることが期待できる。(東京大学大学院医学系研究科骨免疫学寄付講座・岡本 一男)