PTHはZfp467を介したPTH 1型受容体/サイクリックAMP経路依存的なフィードフォワード制御により骨芽細胞分化を促進し、脂肪細胞分化を抑制する
著者: | Liu H, Wada A, Le I, et al |
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雑誌: | Elife. 2023; 26; 12: e83345. |
- PTH
- Zfp467
- 骨髄間葉系細胞
論文サマリー
骨髄間葉系細胞(BM-MSC)におけるPth 1型受容体(Pth1r)の欠損により、転写因子Zfp (Zinc finger protein) 467が上昇し、骨芽細胞の分化抑制と脂肪細胞の増加が認められる。また、Zfp467の欠損は、Pth1rの発現を上昇させ、BM-MSCの分化の方向性が脂肪細胞から骨芽細胞にシフトする。以上は、Pth1rとZfp467のフィードバックループを介したBM-MSCの分化調節機構の存在が示唆されるが、その詳細は不明であった。最初に本論文では、BM-MSCでZfp467を抑制したマウス(Prrx1-cre; Zfp467-floxed )では、骨芽細胞分化の上昇に伴う骨量増加と脂肪細胞の減少を呈することを見出だした。また、培養BM-MSCにおけるPTH処理が、Zfp467の発現を抑制することを示した。そのメカニズムとして、[1]PTHは、主にcAMP/PKA経路を介し、Zfp467の発現を抑制すること、[2]NFkB1が、Pth1rのP2プロモーターに結合することにより、その発現を促すこと、[3]Zfp467はNFkB1の核移行を負に制御し、Pth1rの発現を抑制することが示された。上記のメカニズムにより、Zfp467欠損マウスでは、Pth1rの発現が上昇し、その感受性が高まる結果、PTH誘導性の骨量増加作用が増強することが示された。
推薦者コメント
本論文では、PTHによる骨芽細胞分化促進作用におけるZfp467を介したフィードフォワード機構を明らかにした。すなわち、PTHによるZfp467の発現抑制が、NFkB1を介したPth1rの発現を上昇させ、PTH/PTH1Rシグナルの感受性を高めることにより、骨形成がさらに促進する。しかしながら、Zfp467によるNFkB1の抑制機構など不明な点は残っており、今後のさらなる研究成果の報告が待たれる。(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口 利英)