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KIAA1199欠損は骨格幹細胞の骨芽細胞への分化を促進して骨再生を誘導する

KIAA1199 deficiency enhances skeletal stem cell differentiation to osteoblasts and promotes bone regeneration.
著者:Chen L, Shi K, Ditzel N, et al
雑誌:Nat Commun. 2023; 14(1):2016.
  • 骨格幹細胞
  • 骨形成
  • オステオポンチン

論文サマリー

 これまで著者らは、ヒト骨格幹細胞(hBMSC)の骨芽細胞分化に伴いKIAA1199蛋白質が上昇することを見出だしている。本論文ではこれを発展させ、KIAA1199による骨芽細胞分化抑制作用をin vivoで示した。KIAA1199に関する報告は多岐に渡り、[1]非症候性難聴の原因遺伝子、[2]癌転移のリスクファクター、[3]ヒアルロン酸分解作用を介した内軟骨性骨化制御、[4]hBMSCの遊走制御、[5]RAやOAの滑膜での上昇、などが知られている。本論文で実施されたコホート研究では、KIAA1199の血漿レベルは、骨粗鬆症性の骨折リスクと正の相関を示し、hBMSCにおけるKIAA1199の発現量と骨芽細胞分化能は負の相関が認められた。また、hBMSCにおけるKIAA1199の発現抑制および過剰発現は、骨芽細胞分化を促進および抑制した。さらに、KIAA1199欠損マウスでは、骨形成亢進による海綿骨と皮質骨量の有意な上昇が認められ、骨折修復の促進、卵巣摘出骨粗鬆症モデルにおける骨量減少に対する抵抗性を示した。また、以上のメカニズムとして、骨芽細胞はオステオポンチンを発現し、自身のインテグリン/AKT/ERK-MAPKを活性化して骨芽細胞分化を促進し、KIAA1199は、そのオステオポンチンの発現抑制を介して骨芽細胞分化を負に制御することが解明された。

推薦者コメント

 hBMSCの骨芽細胞分化誘導時に上昇するKIAA1199が骨芽細胞分化を負に制御することを示した興味深い論文であり、骨疾患の治療標的となる可能性も包含する。本論文では、KIAA1199による骨芽細胞の分化阻害が、オステオポンチンの抑制を介することを示したが、KIAA1199の受容体等を介した受容機構やオステオポンチンの抑制メカニズムは不明であり、今後の解明が待たれる。(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口 利英)