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STING依存的なインターフェロンシグナルの活性化は、破骨細胞の分化と骨量減少を抑える

STING-dependent interferon signatures restrict osteoclast differentiation and bone loss in mice.
著者:MacLauchlan S, Kushwaha P, Tai A, et al
雑誌:PNAS 120, e2210409120, 2023.
  • STING
  • IFN-I
  • 破骨細胞

論文サマリー

 Stimulator of interferon gene(STING)は、DNAウイルス感染によって活性化し、I型インターフェロン(IFN-Ⅰ)産生を仲介することで感染防御に関与する因子である。本論文では、非感染時におけるSTINGの役割解明を目的とし、恒常的なSTINGの活性化がもつ骨代謝への影響を明らかにした。筆者らは、恒常的に活性化したSTINGを発現するSAVIマウスを用いることで、STINGの活性化が破骨細胞分化を抑制することを見出した。さらに、STINGを欠損させたマウスでは、破骨細胞数が増加し、骨量が減少することを明らかにした。続いて、野生型とSTING欠損した破骨細胞ならびにその前駆細胞のトランスクリプトーム解析の結果、RANKL未刺激の前駆細胞においてSTING依存的にIFN誘導遺伝子群(ISGs)が発現することを明らかにした。さらに、破骨細胞分化に伴って発現低下する50種類のISGsを同定し、その中でもISG15が破骨細胞分化を抑制する機能をもつことを明らかにした。以上の研究から、STINGがISGsの発現を調節することで破骨細胞分化を制御し、骨の恒常性が維持される新たな分子メカニズムが明らかとなった。

推薦者コメント

 STINGは、病原体の非感染時においても恒常的に活性化し、わずかなIFN-I産生に寄与することが知られている。このIFN-Iに伴って引き起こされる微弱なIFN受容体の活性化シグナルは、トニックシグナルと呼ばれているが、この生理的意義は未だ不明な点が多い現状にある。今後、骨代謝におけるトニックシグナルの重要性を見出した本論文の知見を端緒に、生理的条件下におけるIFN受容体の役割がさらに解明されていくことを期待したい。(同志社大学大学院生命医科学研究科医生命システム専攻・畑野 晃徳、西川 恵三)