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RANK+TLR2+骨髄系細胞サブセットは関節リウマチにおいて自己免疫を関節破壊へ移行させる

RANK+TLR2+ myeloid subpopulation converts autoimmune to joint destruction in rheumatoid arthritis.
著者:Zhang W, Noller K, Crane J, et al
雑誌:eLife 12, e85553, 2023.
  • 関節リウマチ
  • 破骨細胞
  • TLR2

論文サマリー

 本論文では、関節リウマチの関節破壊を引き起こす破骨細胞が、新たなサブセットRANK+TLR2+骨髄系細胞に由来することを明らかにした。筆者らは、コラーゲン誘導性関節炎(CIA)マウスの骨髄細胞を用いたscRNA-seq解析によって見出した、4種類の遺伝子(シアル酸転移酵素St3gal4、酒石酸耐性酸性ホスファターゼAcp5、RANKL受容体Tnfrsf11aおよびToll様受容体Tlr2)の発現パターンの異なる単球・マクロファージ系列の細胞に注目した。中でも、RANK+TLR2骨髄系細胞はTRAP+細胞には分化するが、成熟破骨細胞形成に必要な細胞融合は起こらず骨吸収能を持たない。一方で、RANK+TLR2+骨髄系細胞は、骨吸収活性をもつ多核の破骨細胞への分化能をもち、実際にCIAマウスの骨髄内で増加することが見出された。TLR2やシアル酸転移酵素の阻害剤によって、RANK+TLR2+骨髄系細胞からの破骨細胞分化が抑制された。さらに、シアル酸転移酵素の阻害剤を投与されたCIAマウスでは、RANK+TLR2+骨髄系細胞の増加は維持されるが、成熟破骨細胞数の減少に加えて骨破壊の抑制が観察された。以上の結果から、関節リウマチにおける関節破壊には、シアル酸修飾されたTLR2によって制御されるRANK+TLR2+骨髄系細胞に由来する破骨細胞が関与することが示された。

推薦者コメント

 破骨細胞系列の細胞には、骨破壊を介した骨代謝に加えて、PDGF-BB産生によるH型血管内皮細胞を誘導する働きがあることが知られている。本論文では、RANK+TLR2+細胞が前者に関与することが示されたが、後者にはRANK+TLR2細胞やシアル酸未修飾のTLR2をもつRANK+TLR2+細胞が関わる可能性を考察している。今後、本論文が明らかにした種々のサブセットを標的にすることで、異なる作用機序を活かした新たな骨代謝疾患の治療薬開発につながることが期待される。(同志社大学大学院生命医科学研究科医生命システム専攻・畑野 晃徳、西川 恵三)