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住民バイオバンクにおける耳硬化症のゲノムワイド解析:27個の疾患感受性遺伝子座の同定とそれらが共有する骨格表現型との関連

Genome-wide screen of otosclerosis in population biobanks: 27 loci and shared associations with skeletal structure
著者:Rämö JT, Kiiskinen T, Seist R, et al
雑誌:Nature Commun. 2023; 14: 157.
  • 耳硬化症
  • GWAS
  • population-based biobank

論文サマリー

 耳硬化症は伝導性難聴の最も多い原因の一つ(罹患率0.3%)である。過去のゲノムワイド関連解析(GWAS)の一つは、RELN遺伝子領域との関連を同定している。本論文では、3つの住民バイオバンク(フィンランド:FinnGen、エストニア:EstBB、イギリス:UKBB)を統合し、疾患群3,504人と対照群861,198人に対するメタ解析を行った。その結果、新規に23ヶ所の遺伝子座と、RELN遺伝子、他に過去に責任候補遺伝子または関連領域と報告されている3遺伝子(TGFB1、MEPE、OTSC7)に関連を見出した。ほとんどの関連遺伝子座の近傍に位置する蛋白コード遺伝子は、骨リモデリングか石灰化、あるいは重度の骨格障害疾患との関連があった。その中でTGF-βシグナルに影響を与える複数の遺伝子(TGFB1、SMAD3、CD109、LTBP3、AHSG)が、今後の研究対象として注目される。

推薦者コメント

 これはGWASに常に付随する命題であるが、同定された候補遺伝子群は内耳のみに発現する訳ではないのに、なぜ耳硬化症につながるのか。著者らは、この27個の多型について網羅的表現型関連解析も行った結果、骨密度、座高、身長、変形性股関節症、呼吸機能、除脂肪体重、そしてBMIとも関連を認めたので、これら多型は複雑に作用し合って骨格の個性を創出している可能性がある。内耳迷路骨包の病的な骨リモデリングに起因する耳硬化症もその一環なのかもしれない。(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科骨関節医学講座・前田 真吾)